グリーン革命@2050(英国)、GMOによる生産性向上と環境負荷の低減は本当か?

 Hortibizに投稿された記事、”‘Green revolution’ by 2050 for UK agriculture”は、注目すべきコラムである。2050年までには、遺伝子組み換え作物の導入により、農業の生産性が飛躍的に向上するという記事である。本当だろうか?



 この記事では、今朝のブログでアップした農業生産に関する予見(法政オンライン:読売新聞)とは、まるで逆の楽観論が展開されている。この見解は、英国の研究機関「アダムスミス研究所から公表された研究報告書の要約したもののようだ。市場主義=自由放任主義の元祖、アダムスミスの名前を冠した研究所らしい結論になっている。
 簡単に整理すると、つぎのようになる。遺伝子工学の発達によって、栽培環境の変化や病害虫に耐性を持つ種子が開発される。また、GMOには余計な肥料や農薬の投入が必要ないから、環境汚染などが阻止できる。化学肥料を投入しないから、硝酸態窒素が地中に蓄積しない。散布した農薬が河川に放出されることもない。
 「めでたし、めでたし」である。でも、そんな夢物語が、35年後にほんとうに実現しているものだろうか?

 このストーリーは、どこかおかしくないだろうか? わたしの直感は次のようなものである。
 今朝のコラムで「タネの話」を書いたが、遺伝子操作された”優良な種子(DNA)”は、地球環境の変化やローカルな土壌の特性に、微妙に反応できないのではなかろうか?病害虫に強い耐性を持っているということは、よりドラスティックな環境変化に対しては抵抗力と抵抗性を示せないことを意味してはいないだろうか。
 遺伝子組み換え(GM)は、人工的に突然変異を起こさせる「放射線照射」(radiation)と同等であるという議論がある。確かにそうなのかもしれないが、どことなく怪しげな感覚はどこからくるのだろう?

 わたしは、自然科学者ではないので、科学的な根拠を示すことができない。だが、GMOは、規模の経済と短期的な利益追求によって生み出された経済原理に通じるものがあるというのが、わたしの直感である。わたしたちは原子力を発明して、結局は地球に核のゴミを増やしてしまった。その過去に通じるような過ちに匹敵する事態が生じるのではないのかが気になる。
 杞憂であるといいが、GMOの採用によって、まちがいなく短期の企業収益は向上する。選抜のための投資効率が抜群に良いからだ。だから、規制をしないと事態はどんどん先に進んでいく。
 そして、競争がなくなったあとで、知的所有権が主張できる分、GMOは種子独占の手段になる。食べ物の根源にある種子は、生存のインフラである。種子の独占は、人類の生存をめぐる戦いの切り札である。だから、グローバルな紛争のタネが、遺伝子工学によって蒔かれているのかもしれない。
 わたしたちの子孫が気が付いたときには、どこにも自分たちの自由になるタネが手元からなくなっている。水も光も土もあったとしても、もはや根と芽を出すタネが亡くなっていることに。
 
 ひとつの楽観論を引用する。世の中のトレンドになりかけている発想である。科学者の集団はいつも、好奇心からこのような道を歩いてきた。それが吉と出たこともある。原子爆弾(原発の科学的な卵)や毒ガス(農薬の副産物)では、凶と出たこともあった。

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‘Green revolution’ by 2050 for UK agriculture

UK agriculture will have undergone a “green revolution” by 2050 with farmers growing genetically modified crops that are self-fertilising, pest and drought resistant, claims a think tank study.

The combination of self-fertilisation and pest resistance along with crops which are saline resistant and heat and cold tolerant will “significantly increase the yield per acre of many food crops”.

In addition, new strains will be developed through genetic engineering that have higher edible yields a plant – and each modified plant will produce more food than previous strains.

Many of these will be developed in UK laboratories and universities, including GM trees that can mature in six years instead of 50 – tree cover will be “many times what it is today”.

These are some of the predictions put forward for agriculture in a new “futurology” study entitled The UK and the World in 2050, published by the Adam Smith Institute.

In a chapter titled “Green, green, green”, Adam Smith Institute president Dr Madsen Pirie wrote: “Agriculture will be very much more environmentally friendly by 2050; this will be true throughout the world, but especially so in the UK. The difference will have been achieved by the widespread, almost universal, use of genetically modified organisms (GMs).

GMs will be used to develop strains of crops which can fertilise themselves by the fixation of atmospheric nitrogen to make nitrates. Genetic engineering will alter cereal crops so they can achieve what legumes currently do. This will remove the necessity to spread fields with large quantities of chemical fertilisers, with the attendant run-off into rivers and streams that creates algae blooms that kill fish by using their oxygen.”

The UK will also pioneer technology to enable crops to be grown on land previously thought insufficiently fertile, according to the study. 

“The effect will be to make much more land susceptible to cultivation, land that was previously thought of as wasteland,” it added.

Dr Pirie also predicted hybridised vegetables, created by cross-breeding and genetic modification, will be available to eat.

02/21/2016 – Farmers Weekly