6月の予言の通りに、米マクドナルド本社が日本法人を売却へ

 夜の2時すぎに、知り合いの記者から携帯にメールが入った。「日経曰く、マック日本法人、売却を”打診”だとか。先生の予想通りの展開になってきました」。オンライン配信記事は、「日本マクドナルド売却 米本社、ファンドなどに打診 株最大33%分」(2015/12/22 2:01)となっている。



 マックの売却(提案)は夏前に、いくつの雑誌インタビューで話していたことだ。日本法人の現経営陣(米国本社の管轄下)では、日本事業の再生はむずかしい。株式をいったん非公開にして、新しい経営陣でやりなおすしかない。
 すかいらーく(ガスト)のように、ファンドが購入して、事業を再生させてから再度の売却。これがいちばんあり得るシナリオである。知り合いのマクドナルド関係者にも、このことは話してある。しかし、日経の記事が指摘するように、時価総額が4000億円もある。しかも、年末で(優待券の権利)株価は上昇している。
 たとえば、米国本社が握っている株式(49.9%)のうち、最大33%を売却しようとすれば、約1200億円の金額になる。いまマックの経営状態をみて、1200億円の価値を付ける商社(三菱商事、伊藤忠、三井物産)やファンド(ベイン)がいるかどうか? 商社の背後には、CVSや流通グループが控えている。ゲームとしてはおもしろいが、なにせマクドナルド再生の道筋が描けていない。

 日経のオンラインの記事から引用する。
 【ニューヨーク=山下晃】米マクドナルドが約5割を握る日本マクドナルドホールディングス株の売却に向け、大手商社や国内外の投資ファンドに打診を始めたことが21日わかった。最大約33%分を売却する方針で、譲渡先は筆頭株主として経営の主導権を握る可能性がある。売却額は1000億円規模の見通し。外部の資本とノウハウを取り込み低迷する日本事業の再建を急ぐ。日本進出の1971年以来、続いていた米本社の直轄体制を見直す。
 このほど米マクドナルド幹部が来日し、商社や投資ファンドなど計5社程度に譲渡を打診した。発行済み株式の15~33%分の相対売却を提案、来年1月中旬までの回答を求めている。その後、最有力候補に優先交渉権を与える見込み。売却が実現すれば米本社主導の経営体制から転換する。

 先ほど、この記事を新聞で見た知り合いの女性編集者から、「おはようございます。日本マクドナルドの株式売却は、見捨てられた?ということなのですか?」との質問。「いや、(米国のマネジメントでは)やりようがなくなった。もはや収益源にもならない。ドライな米国の株主資本主義」とわたしは答えておいた。
 つまりは、日本のマクドナルドは、それ自身の事業が傾いている米国本社のお荷物になりかけている。来期以降は、配当が期待できない。そればかりではなく、売上も低下しているから、3%のロイヤリティは減っていく。2004年に藤田ファミリーを経営から追い出したはいいが、その10年後の惨劇である。ある意味で、自業自得の結果とも考えられる。
 それでも、1971年の日本上陸から45年間、米国本社は、日本から充分な収益を上げたのだから、もうそれでよいではないか。 1000億程度で売却できれば、米国本社にとっては御の字だろう。いや、それほど虫のいい金額が提示されるだろうか?

 本日の株式市場の動向が気になる。損をこうむるのは、優待目当てで株式を持っている個人株主だろうか? それとも、TOBやMBOでプレミアムを期待する投資家にとって、日本マクドナルドの株式は、、、

 *マック売却説:予言の根拠の一つを示しておく。オリジナルは、6月のインタビュー記事にある。
 『AGRIO』(時事通信社)拙稿「マクドナルドはどこへ行くのか~ 29カ月連続客数減の衝撃」(2015年10月20日号)