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<コラム24> テレビ番組のプログラム価値マップ
 マーケティングの入門の校正を14章分終えた。余禄で、各章にコラムをふたつずつ書いている。昔の研究や雑記(HP)からのコピーペーストが多い。今朝方書いたコラムをひとつ紹介する。日テレのディレクターである元大学院生の岩崎達也氏との共同論文を要約したものである。テレビ番組のプログラム価値マップ。第12章「コミュニケーション戦略(2):広告宣伝活動」のコラム24である。
 <視聴の質を表わすQレイト>
 視聴率一辺倒だったテレビ番組の評価に、質的尺度(Qレイト=好意度)を導入しようとする意欲的な試みがなされている。従来からある「視聴率」(Rレイト)と「視聴質」(Qレイト)を組み合わせて、二つの指標から番組の価値を表す「二次元マップ」(プログラム価値マップ)を提案しているところが画期的なところである。
 Qレイト(好意度)とは、視聴経験者の中で、「その番組が非常に好き」(5段階評価)と答えた人の割合である。例えば、検証に用いられたバラエティ番組(2007年5月時点での各局のプライムタイム(19〜23時)は全部で91番組)では、Qレイトの平均値は16.4%である)である。同じ番組の同時期の平均視聴率は、11.4%である。
 図表1は、全91のバラエティ番組を、プログラム価値マップ上でプロットしたものである。それぞれの番組は、視聴の「広がり」(Rレイト=視聴率)と「深さ」(Qレイト=視聴質)のスコアによって、4つの価値ポジションのいずれかに分類される。
 番組ポジションの推移を追跡することで、番組のライフサイクルを明らかにすることができる。「ロングセラー番組」がどのように維持できているのか?番組が「終番」になる場合の法則などを、このプログラム価値マップを活用して記述することができる。
 なお、Qレイトは、年4回調査(民放各局)と年2回調査(ビデオリサーチ)の二種類があるが、以下では、視聴率、Qレイトともに、ビデオリサーチのデータを用いている(97年〜06年:時点1〜時点19)。
 
 <テレビ番組の現在ポジション>
 テレビ番組は、各時点で4つのタイプに分類できる(「前座」「泣かず飛ばず」「スター」「売れっ子」)。視聴率とQレイトの平均値を中心に、全バラエティ番組を4つの象限にプロットしてみたのが、図表1であった。ネーミングの由来は、以下の通りである。
  峅峽船好拭次廖31番組):第一象限の「高視聴率・高Qレイト」の番組 ◆崛虻臓廖11番組):第二象限の「低視聴率・高Qレイト」の番組 「泣かず飛ばず」(32番組):第三象限の「低視聴率・低Qレイト」の番組 ぁ崘笋譴短辧廖17番組):第4象限の「高視聴率・低Qレイト」の番組高視聴率と高いQレイトは相関している(図表1、相関係数=0.474)。
 また、番組ごとには、Qレイトと視聴率は、時系列的にも相関していることが多い。例えば、「伊藤家の食卓」(97年〜06年)の一生を見ると、高い視聴率の時期と高いQレイトが連動していることがわかる(図表2)。よく見ると、Qレイトが視聴率よりも先に動いているのが見てとれる。その逆のケースもある(後述)。
 
 <テレビ番組のライフサイクル:3つの法則>
 番組ライフサイクルを分析することから、3つの法則が抽出できた。“崛箸痢峪計回りの法則」、◆屮蹈鵐哀札蕁爾遼‖А廖↓「番組終了の法則」である。
 
  峪計回りの法則」(番組ヒットの法則)
 番組がヒットするパターンには、ふたつある。先に一部の層の支持で好意度が上がり、後に視聴行動の広がりができるケース(91番組中21番組)、あるいは、視聴率が先にあがり、Qレイト(好意度)が後で上昇していくケース(91番組中12番組)。
 第2象限経由の11番組を見ると、7番組でT層(10代)が個人視聴率1位である。T(10代)、F1(女性20〜34歳)、F2(女性35〜49歳)でも、当初に高いQレイトを獲得している。若者と若い女性が見ると視聴率は上がる。
 多くのテレビ番組では、どちらかいえば、番組の好意度が先行するケースが多い。したがって、プログラム価値マップ上では、右回りの方向に、番組のポジションが動いてほうが一般的である。典型的な時計回りの法則は、「学校に行こう!MAX」に見られる(図表3)

  ◆屮蹈鵐哀札蕁爾遼‖А
 番組のライフサイクルが終わりかける<下りルート>は、3つである。Qレイトが落ちて、第4象限=「売れっ子」に移行するケース(10番組)、視聴率が下がって第2象限「前座」に移行するケース(3番組)、Qレイトも世帯視聴率もともに下がって第3象限「鳴かず飛ばず」へ移行するケース(4番組)。つまり、Qレイトが先に落ちて、その後に視聴率が落ちていくケースが多い。これは、「右回りの法則」と符合している。
 ロングセラー番組は、第1象限と第4象限を繰り返す「1−4−1」の経路をとる番組が多い。例えば、「踊る!さんま御殿!」「うたばん」などである(全91番組19番組)。番組が第4象限に落ちたら、Qレイト(好意度)の回復、てこ入れがロングセラーの鉄則である(図表4「東京フレンドパーク」)。
 
 「番組終了の法則」
 第一象限の花形スター番組も、最後は第3象限の「鳴かず飛ばず」で終了している。視聴率が変わらなくても、Qレイトが平均値を切ったら、番組はリニューアルのタイミングを迎えている。第3象限は、「番組終焉の地」である(図表2:「伊藤家の食卓」の最後)。

 このように、プログラム価値マップのよって、番組の盛衰をみることである。番組のライフサイクル管理と、早期警報装置として、プログラム価値マップは有効である。
 
出典:岩崎達也、小川孔輔(2008)「テレビ番組のプログラム価値マップ:質的評価尺度の活用と番組のライフサイクルマネジメント(上)(下)」『日経広告研究所報』240号(8-9月)、241号(10-11月)を要約。
| Kosuke Ogawa | 07:17 | - | - | pookmark |

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