中国依存度を、輸出金額だけで判断するのは古い考え方だ

 『フォーブス』(11月30日号)が「中国依存度ランキング」を発表した。輸出全体に占める中国の割合とGDPに占める中国への輸出額の比率を基準に各国を順位付けしている。中国輸出がGDP比で3%、中国の輸出シェアが19%の日本は、世界で5番目に中国依存度が高い国だそうだ。



 ちょっと待ってほしい。いま東京銀座や富士山麓、長崎のハウステンボスにたむろしている中国人旅行者が消えてしまったら。日本の経済はどうなるだろうか?国内消費への外国人旅行客の貢献額を加えて、中国依存度を補正すべきではないだろうか?
 依存度第一位のオーストラリア国内に、中国人がそれほどお金を落としているとは思えない。韓国と台湾は依存度が大きいとはいえ、国の経済規模はそれほど大きくはない。台湾などは、そう発言すると怒られるかもしれないが、投資実績や企業人材の移動環境をよく見れば、経済的にはすでにひとつの国のようなものだ。
 というわけで、日本の依存度は、少なくとも4位のチリよりは上だと思われる。下手をすると、実は韓国や台湾よりも依存度は高いかもしれない。物財の輸出だけで、経済依存度を判断するのはいかがなものだろうか。実態を見誤ってしまう。サービス(輸出)と観光収入も考慮に入れてほしいものだ。

 もちろん、2015年の日本を訪問する中国観光客は、推定で600万人が見込まれている。一人が30万円を支出するとして、年間1兆8千億円が日本に落ちることになる。もっとも中国の旅行社の取り分もあるので、すべてが日本の国内消費を押し上げるわけではない。GDPの3%で輸出金額が15兆円を超えているから、中国人観光客の貢献は10%程度のものである。
 ただし、わたしが来週号(12月7日号と14日号)の『日経MJ』「ヒット塾:(上)カジュアル衣料品、(下)コンビニエンスストア」で紹介するが、帰国後の日本ブランドの購買波及効果がばかにならないのである。また、越境EC(輸出)の活況も報告されている。

 <参考>「中国依存度ラインキング」(2015年11月)
 5位:日本。対中輸出額/輸出額=19%、対中輸出額はGDPの3%に相当。
 4位:チリ。対中輸出額/輸出額=23%、対中輸出額はGDPの8%に相当。
 3位:韓国。対中輸出額/輸出額=25%、対中輸出額はGDPの11%に相当。
 2位:台湾。対中輸出額/輸出額=26%、対中輸出額はGDPの16%に相当。
 1位:オーストラリア。対中輸出額/輸出額=34%、対中輸出額はGDPの6%に相当。