酒田つや姫ハーフは、前半を突っ込みすぎた。ハイペースがたたって、ゴールタイムは久しぶりに2時間をオーバーした。2時間2分34秒。またいちからやりなおしだ。つぎは南米ツアーのあと、11月の宇都宮マラソンになる。まずは、1時間52~53分台への復帰を目指す。
さて、走った後のランチは、昨夜のうちに、奥田シェフが経営しているアルケッチャーノを予約していた。ゴール地点の酒田市光が丘運動公園からだと、レンタカーで約40分。前日の予約はむずかしいかも?と阿部社長は心配してくれたが、運良く13時半からテーブルがひとつ空いていた。いや、空けてくれた。
ゴール後に、着替えをしないまま、アルケッチャーノまでレンタカーを走らせた。トイレでジーンズに履き替えさせてもらえれば、と都合良く考えていた。ところがどっこい、アルケッチャーノに着いたら満席。
予約をしてこなかったお客さんは、満席で座れない。店に入れず、残念と言いながら、帰って行く羽目に。なので、トイレどころか、入り口にも待ち行列の人だかりができていた。
ちなみに、となりの姉妹店イルケッチヤーノならば、簡単なパスタくらいなら、予約なしで待って食べられる。わたしも、アルケッチャーノが予約できなければ、イルケッチヤーノにするつもりだった。
二階席までは上がらなかったが、一階だけでも50席はありそうだ。わたしは、13時半からの予約だから余裕はある。でも、入り口側が狭いのか、なにやら落ち着かない。原因がすぐにわかった。なんだか関西弁の女性がやたらと目立つのだ。海外でも、かしましい女性は、たいてい関空から飛んでくるヒョウ柄のおばちゃん達だ。
ただし、ここに来ているのは、芦屋か宝塚からのお客さんのようで、品のあるおばさんばかりに見えたのだが。エレガントな着こなしをしている。だが、やはりどこかわたしには関西女たちには苦手意識がある。
案の定、トイレで着替えさせてもらおうとしたら事件が起こった。若い店員のお姉さんが、わが事情を察してトイレに案内してくれそうになった。その瞬間、その元タカラヅカさんが、トイレの前まで進もうとしていたわたしを遮った。「トイレは、ひとつしかないんですよ」と。
どうやら、自分は先に立って待っているから、あなたに権利はないんですよ、と言いたいらしかった。でも、その女性店員さんの説明によると、トイレのドアはひとつでも、中は男性用と女性用に分かれている。男性用には、待っている人はいないらしい。
そうなのだ。アルケッチャーノは女性に圧倒的に人気で、店内を見渡すと、9割が女性客
。だから、劇団四季のように、女性用のトイレを増やすべきなのに、少なくとも、一階トイレは男女半々。奥田さんは、気がついていないだろうな。関西からの女性客が多いことは、トイレ対策が必要なんですよ。
お料理と室内の雰囲気がよいのは、有楽町の山形サンダンデロでも、東京駅構内のユデロでも同じこと。だが、ここ鶴岡の本店は、その他サービスもすばらしかった。
アルケッチャーノは、すでにかなり有名なお店になっている。それでも、きちんとお客さんの来店と退店のタイミングで、店員が全員で、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と、山彦コールができている。
今日などは、店主の奥田さんがミラノにイベントで出かけている。主人が不在でも、それでも、きちんとサービスレベルが維持できている。素晴らしいことだ。
そして、料理とメニュー説明も、接客も素晴らしかった。遠くから来ている客がほとんどだから、料理とサービスの失敗は許されない。
ここで、本日のコース料理を紹介したい。本来ならば、写真も撮ってあるから、美しいプレートをみなさんに紹介したいところだが。わたしのブログは、文章だけで伝えることを基本方針としている。
前菜は、ワラサのカルパッチョ。二皿目はスープで、庄内野菜のミネストローネ。続いて、庄内キノコと、庄内米はえぬきのリゾット。テーブルを担当してくれた女性店員さん(トイレのお姉さん)にたずねたところ、コリコリとして食感が良かったキノコは、地元産のしいたけでした。
ここまでで、わたしは、ノンアルコールのビールと、ノンアルコールの赤ワインを一杯ずつ。車を運転しているから仕方なし。でも、アルコールで酔っ払わなくとも、アルケッチャーノのイタリアンは充分に楽しめる。美味しい!
ここで、フォカッチャが登場しました。もう少し早く欲しかったな。笑、で、ノンアルコールのビールを追加注文。
四皿目は、ようやくメインプレートに。山形牛のサーロインのビステッカ。炭塩と西洋辛子で食する。野菜の付け合わせ、サラダの盛り合わせのプレゼンテーションが素晴らしい。たぶんだが、小松菜、水菜、ラデッシュの輪切りのミックス。
わたしは、たぶん一般人も、牛を塩だけで食べることをふだんしないだろう。これだと、牛肉の素材の良さがわかる。旨味が際立っていることがわかる。
なお、牛肉を乗せたプレートは石焼風だ。温めてはいないだろうが。見た目も大切だ。なにせ、メインの皿なのだから。
5皿目は、ズワイガニとズッキーニのクリームパスタ。メインとパスタは、自分で選んだものだ。ズッキーニの切り方に注目。ずいぶん薄く包丁で切ってある。形は、扇形の六角形。
この手法は、パスタとズッキーニが喧嘩しないようにするためだろう。往々にして、細めのパスタを使うと、具材がパスタの食感を邪魔してしまう。もう一種類、名前がわからない黄色い野菜(たぶん、かぼちゃ)がはいっていたが、これも切り方は同じ扇形だった、
最後はドルチェ。キャラメルのアイスムースが出てきた。月の雫の塩ミルクジェラート。あまり甘いものを最後に食べないわたしだが、これはうまかった。
わたしは、ハーブティーを。いつものコーヒーはパスです。ムースには、合わないから。
さてさて、これでランチセットは全て終わるのだが、皆さん、会計はおいくらになると思いますか?
テーブルて会計をするのですが、なんと、お姉さんが持ってきてくれたレシートを見て驚愕。しめて、7041円。もちろん、税込のお値段です。現金で支払いました。
この間、わたしは、何人かの人とラインでチャットをしていました。画像も送っています。テーブル担当の女性と、もう一人のソムリエの男性から、メニューの説明を受けていました。
そのまま、リアルタイムでテキストにしていましたが、やはり聞き漏らすこともあります。まあ、記憶が消えてしまった素材もあります。
途中からは、メニューの説明を書いた、お品書きが欲しくなりました。4皿目あたりからです。そこで、その男性の方に、頼み事をしてしまいました。「今日、わたしが食べたメニューを説明したものをいただけませんか?」
次のお皿、山形牛サーロインまで進んでも、何も出てこない。なので、標準的なものはないのだろうな。
そう思っていると、デザートのあとのハーブティーと一緒に出てきました。それは、「サワラのカルパッチョ」で始まるA4の白い紙です。冒頭には、「本日のお品書き」と書いてあります。
しかも、墨汁で手書きのものでした。写真を見せられないのが残念なのですが、人柄がわかる文字列です。感激でした。このごろ、高級な旅館やレストランでは、その日のメニューがPCを使って準備されています。でも、わたしが手渡されたのは、手書きのお品書きでした。
「どうやって作ったの?」とわたしがたずねると、「いや、忙しかったので、時間がかかりましたが、まあささっと」
ちょっとはにかみながら、わたしが感激してほめたから、うれしそうに。
「東京の奥田さんの店にも、しょっちゅう行くのよ。記念に、お品書きの裏に、名前を書いてよ」とわたし。菊池隼人くん。筆がなかったから、ボールペンで書いてくれた。
いまはミラノにいる奥田さんは、もうすぐ帰国するはずだ。是非ともこの話を伝えたいと思っている。
会計を済ませて駐車場に向かうわたしを、菊池くんは玄関まで見送りに出てくれた。先ほどの女性客にはしていなかったサービスだ。エンジンをかけて車を国道に出した。律義にも、彼は45度にお辞儀をして入り口に立って待ってくれていた。