久しぶりでピアノ演奏会に行った。演奏者は、フジコヘミングさん。推定年齢が83歳(非公開、推定)。スゥーデン人の建築家と日本人の母親のハーフで、戦前のドイツ生まれ。80歳を超えると、ピアニストも鍵を打つ能力が低下するように思うが、実に演奏は力強かった。
フジコヘミングは、ピアノ曲としてもっともポピュラーなものを選んでいた。モーツァルトのピアノソナタ(A)、ショパンのノクターン(夜想曲)、エチュード作品10(革命)、リストのカンパネラ。
これほどポピュラーな曲を名人が弾くのは、案外むずかしいのではないだろうか?技術ではなく、コンテンツの選択についてだ。それも軒並み、学生の演奏会やピアノコンクールで演奏されるショパンやモーツァルトのオンパレードだからだ。聴衆は50才以上の女子が90%。彼女たちは、自分達でラベルやラフマニノフを弾いたことがあったのではないのか。
ヘミングさんの演奏を聴いていて、別のことを考えていた。作曲者たちの生きざまについてだ。彼ら、クラシックの巨匠たちは、18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパで生まれている。あの時代の音楽家たちは不遇で短命だった。短い命を30~40才で閉じている。
シューベルト(1797~1828)は、享年32。モーツァルト(1756~1791)は、享年36。ショパン(1810~1849)は、享年40。リスト(1811~1886)やラフマニノフ(1873~1943)などは、例外的に70すぎまでの長生きだった。
ヘミングさんの演目リストには、ラベル(1875~1837)やドビッシー(1862~1918)も入っていた。彼らは60才前後まで生きたが、いまの物差しではそれほど長命というわけではない。
この話を、埼玉の病院で病気療養中の徳永奈美さん(アクア社長)に出したら、返事が帰ってきた。
何故あの時代の音楽家が集中して巨匠がいて、それも短命で有りながら素晴らしい作品を残し、その後の時代の作品が目立たないのか?不思議に感じています。
クラシック音楽の巨匠たちは、19世紀末で種が断絶している。小惑星の落下で消滅したと言われている、恐竜のようだ。
楽士たちが演奏に使っているインスツルーメント(楽器類)が変わったわけではない。演奏技術は上がってるかもしれない。しかし、作曲家は?たしかに不思議と言えば不思議な話だ。