午後の天気が心配だ。靖国神社で花見があるからだ。JFMAの観桜会は、昨年は雨で中止になった。そういえば、学部生との皇居マラソンも、去年は3回雨で流れている。2014年は、雨と雪(バレンタインの日も大雪)にたたられた年だった。
ところで、昨日は、「俺の株式会社」(本社:中央区銀座8丁目、坂本孝社長)の入社式に参加してきた。場所は、旧本社があったトミタビル(新橋)の7F。先週の23日に本社が並木通りに移転して、旧本社のオフィススペースが研修室に変わっていた。
新入社員は64名。大阪の辻調理師学校など、調理師専門学校を卒業したばかり、19~23歳の若い子たちばかりだ。坂本社長は、「コンパ」が大好きだが、19歳の子にお酒は飲ませられない。「お酒くらい、いいだろう。Q(キュー)」という坂本社長は、秘書の岩崎さんから、「絶対にだめです!」と叱られていた。
ちなみに、岩崎さんは高橋尚子(オリンピックメダリスト)に似ているので、坂本さんは彼女を「Qちゃん」といまでも呼んでいる。
近年、飲食業界に入る若者は激減している。そして、たとえこの業界に入ってきても、10年後には、そのわずか10%しかシェフとして残れていない。仕事がきつい割には、給与や労働条件が良いわけではないからだ。
「俺の株式会社」は、そうした若者たちの夢を叶える会社になるべく組織されている。料理が好きな男子、サービスで身を立てたいと思っている女子のための孵化器(インキュベーション)の役割。かつての小売業界のイトーヨーカ堂、飲食業界のマクドナルドのような人材輩出企業になれるかどうか。
入社式の後は、坂本社長を囲んでの「人事研修部」のミーティングに参加させていただいた。すでに何度が会合をもっていたらしく、画用紙に新しい「採用・研修システム」の未来図が手書きで描かれている。パートアルバイトから正社員に進む道を具体的にみつける方法が議論されていた。わたしにも意見が求められた。
学生たちに人気のアルバイトは、ユニクロやスタバである。就職面接でその経験を語ることができるからだ。そして、実際に学生はゼミのコンパでも、そうした企業での働きぶりを話すことがある。聞いているその他の学生も、ブランドが立っている企業(非ブラック企業)には悪い印象を持たないようだ。
結局のところ、パートアルバイトを含めて、良質な社員を増やすためには、働き甲斐のある職場を作るしかない。ブックオフの創業以来、坂本社長が描いてきた未来は、立派なブランドと社員の夢の実現だろう。しかし、それが単純な「のれん分け」(たとえば、FCで独立)でないことは、坂本さんと幹部社員との会話から容易に想像がつく。
それでは、のれん分け(=独立)以外で、外食産業で社員の夢が叶う「キャリアパス」はどのようなものなのだろうか?俺の株式会社は、高原価率・高回転率のビジネスモデルを発見した。しかし、坂本社長も、若いシェフたちが夢を実現できる「働き方の道筋」を発見できているわけではない。
いまは、彼らのキャリアパスをキャンバスに描く構想がスタートしたばかりだ。ブックオフ時代の経験を踏まえて、それとは異なる飲食業界での新しいキャリア形成モデルを作る実験がようやくスタートしたばかりである。