「秋田 森のテラス」の番人とお会いしました: 遠い昔にひと夏を過ごした阿仁合村(米内沢)からの伝言

 「秋田 森のテラス」の番人(山田雄太郎・芙美子ご夫妻)と、水道橋の「庭のホテル」でランチをご一緒した。ホテルの庭を、山田さんの造園設計事務所がデザインし、メンテナンスしているからだった。うっかり、若夫婦にお昼をご馳走になってしまった。



 わたしがトイレに立っているすきに、ふたりが先に支払いを済ましてしまったからだ。父親の年代に属する年長者としては、あるまじき油断の間だった(苦笑)。

 おふたりに会うことになったのは、友人の鷲沢幸治さん(秋田ダリア雄和園代表)のご縁である。先週の月曜日に、世界的なダリアの育種家から、夜中に電話があった。突然の連絡は、いつものことなので慣れている。
 ただし、今回は、携帯電話のナンバープレートに表示された本人とは声が違っていた。やや戸惑いながら話しかけてきたのは、若い男性だった。秋田の山奥で一緒に酒を飲んでいるらしい。山田さんが、鷲沢さんに教唆されて、事情がよくわからずにわたしの携帯に電話をかけてきたのだった。
 わたしはすでにベッドで横になっていた。夜中の10時すぎである。鷲沢さんがいる場所は、秋田県北秋田市米内沢地区。秋田内陸鉄道(むかしは、たしか阿仁合線と呼ばれていた)の米内沢駅近くかららしい。遠征をしている鷲沢さんご本人は、秋田空港の近くでダリアを育てている。

 山田さんから、鷲沢さんに電話が変わった。「先生(しぇんしぇ)、先生(しぇんしぇ)、いまの若い人(わげえふと)、紹介するから、東京で会ってやってけれ(会ってやってください)」
 事情をたずねてみると、どうやら、「秋田 森のテラス」の通称「番人小屋」(米内沢駅から徒歩25分)で、酒盛りをしている最中だった。酩酊している様子だったので、あまり要領を得ない。
 本人からの説明によれば、「森のテラス」の番人たちが、ダリヤの球根を越冬させることができずに、悪戦苦闘しているとのこと。見るに見かねた鷲沢さんが、同じ秋田県人として、テラスの庭でダリアを育てるお手伝いに米内沢まで出張指導に来ているとのこと。
 「花業界の会長さんで、秋田出身の大学の先生がいるから、会ってみたら?」と山田さん夫婦に言ったのだろう。

 「秋田 森のテラス」は、山田さんのお父さん(山田茂雄さん)が10年前に、生れ故郷で開いたオープンガーデンである。樽岱山のふもとに広がる26ヘクタールの土地は、自然をそのをままに残したフリースペースである。個人の庭を地元の人たちに開放している。
 7年ほど前からは、地元の人だけでなく、東京から来る人たちが、蛍の夕べを企画したり、田植えや稲刈りに参加することもできるようにした。
 「森の番人」(山田さんご夫妻)に連絡をとれば、自分たちでイベントを自由に組むこともできる。近くの森吉山には、あまり知られていないが、大小たくさんの滝がある。夏場は、滝のしぶきで涼が楽しめる。
 
 山田さんご夫妻は、事務所兼自宅の「東京 森のテラス」(東京都世田谷区仙川、オープンガーデン)に、父君と一緒にお住まいである。先週、「秋田 森のテラス」で、知人や友人たちを招いて自分たちの結婚式を終えたばかりである。
 わたしが生まれ育った秋田県に、美しい自然がそのままに残されている「森のテラス」が存在することを伝えるためだけに、わたしに会いに来たのだった。それが昨日(5月14日)のことである。
 
  (つづく)