標記の会議に委員として出席した。業界から代表者17名が、農水省主催の会議に同席していた。オランダで10年ごとに開催される「国際園芸博覧会」(通称、フロリアード)に、日本政府がはじめて出展したのは、1992年のズーテルメアからである。今回で3回目になる。
屋内展示とおよその予算は決まっている。金額は数億円と聞いている。その基本方針を決めるのに、約1年前に、日本側の基本コンセプトと出展内容を相談するのは、ずいぶん間延びしていると感じたものだ。
この会議に入る前に、ほとんど事前知識をもっていなかった。なにせ、この20年間、わたしはフロリアードに対しては「部外者」だった。JFMA会長として、そのことにまったく気が付いていなかったのも、うっかりではある。しかし、2002年と言えば、JFMAを創始してからわずか2年目である。
2012年4月~10月にかけて、ドイツ国境の町、フェンローで国際展示会は開かれる。今回のフロリアードのテーマは、「自然と調和する生活」(英語では、Be part of the theater in nature, get closer to the quality of life)である。このテーマは、「経験経済」の時代を反映している。キャッチコピーは、Green Experienceである(植物のある生活を楽しむ!)。
日本語の訳文(自然と調査する、、、)については、ひとこと言いたいが、それはどうでもよい。大切なのは、フロリアードの日本ブースへの出展基本方針についてである。
3時間の会議に先立ち、農水省が素案として出してきたのは、以下の3つである。
(1)花き等園芸産業の振興(内外需の拡大など)
(2)日本の園芸文化のファンや理解者づくり(文化の発信など)
(3)業界の活性化と将来を担う人材の育成
さらに詳しい内容は、会議の席でも示されていたのだが、その点は省略する。
出席者全員が意見を述べたが、(1)~(3)の基本方針に異議を唱えたひとはひとりもいなかった。各自の意見内容は、一般に公開されることになっている。わたしも賛成意見を述べた。
他の人の発言は、内部的にチェックを受けてからでないと公開できないだろう。勝手に書くわけにもいかない。だから、わたしの発言だけをここで開示するに留める。
さまざまな意見が出されていた。わたしと同じような意見もあったし、それとは反対の意見もあった。
<JFMAを代表して> 小川の主張
①国際展示会への出展効果
1992年以来、日本がフロリアードに2回出展して得た最大の効果は、花業界の未来を担う人材(当時は若かった)が、オランダでの展示運営に参加することで、業界人としてその後に成長するベースが築けたことである。現在、30~40歳の当時の若手が、いまでも花業界で大いに活躍している。そのきっかけを与えたのが、フロリアードである。
だから、(3)の役割がいまでももっとも重要だと思う。ただし、いまや花の業界に貢献できる若者は、花を作って販売している若者だけではない。むしろ、半年間のオランダでの経験を一般に伝える役割を考えると、生産者や卸業者や花店屋の後継者だけではなく、マスコミや新聞・雑誌社など、フロリアードが終わったあとの広報活動などに貢献できる若者で、異業種からの代表者を送り込んでもよいのではないだろうか。
日本をアピールするのならば、国内も大事だが英語や中国語での発信も大切だろう。派遣する人材の人選も、当然そうした観点からなされるべきである。
②文化発信は、一般的にすぎては意味がない
日本の花文化を伝えることは重要であるが、一般的な日本文化をアピールする時代はすでに終わっている。業界としての発信は、もっと日本固有の植物や技術を、具体的に伝えるべきだ。たとえば、ミニ盆栽を作る作業工程をデモンストレーションする(体験してもらう!)など。
もの商品を買ってもらう時代は、終わっている。体験を通して文化理解を高め、それが販売(即売)につながる。展示には、そのような仕組みを取り入れるべきだ。
*関連して、NHKディレクターの横田さんから発言があった。日光江戸村のような伝統的な「長屋風景」を舞台(theater)にして、盆栽や花などを取り入れた「日本の庶民の生活」をモチーフに展示を工夫してみては、、、
**小川の反応・・ 縁側に風鈴、などがほしいですね(オランダ人の委員が、それに類した発言をしていた)。
③花産業振興の視点
(1)産業の振興がもっとも大切である。基本コンセプトを作る際には、きちんと練りあげられたテーマ(後述)の下で、展示物をコーディネートしてほしい。国を挙げて日本の花(種苗や植木を含む)をアピールするので、花業界は総出で事にあたることになる。だから、ともすると、全員が差し出すものをすべて展示しようとなる。しかし、今回はこれだけはやめてほしい。
わたしたちが伝えたい、世界の舞台に提供するアイテムは、絞り込んでほしい。すべてを提示することは、「何も見られないリスク」を高める。結局は、お金を無駄遣いしてしまう。そして、あれもこれもでは、テーマに統一感を失ってしまう。
たとえば、いまの日本の花産業が世界に価値を示せるものは、固有の品種(種苗)とそれを作る技術である。おそらくは、ミニチュア化(小型化)と簡素化(シンプルな良さを伝える)がその根底にはあるだろう(miniaturization & simplification?)。そこに絞り込んで、日本の民間・個人育種の品種や盆栽アートなどを展示する。
このような日本らしさには、同時に「現代的な」視点を加えてほしい。日本の花文化を古色蒼然(伝統文化一辺倒)ではなく、モダンでコンテンポラリーな側面(実際にもそうである!)を強調してほしい。それでこそ、国際的に通用する日本の価値が打ち出せる。
業界の振興につながるためには、フロリアードの展示だけで広報活動を終わらせてほしくない。開催終了後には、優秀品種などを、のちに国内外でプロモーションするために、特別の予算を計上してほしい。お祭りも大切だが、展示した商品(品種)がその後に国際的な販売増加につながるように、PRをもっと大切にすべきである。
以上、わたしの意見は、やや長かったかもしれない。このブログは、そのまま、農水省に送付するつもりである。発言にさらに注釈を加えてある。