すだちプロモーション現地調査(1)@JA徳島、県庁、神山町農協

 弟子の花畑(裕香)と昨日まで、徳島県の現地で「すだちプロモーション」の意見交換会(報告会)をしてきた。わたしは、ついでに徳島県の農業普及員のかたを対象に、徳島農業研究所で「やさしいマーケティング論」の講演を行った。小雨の中での帰京だった。


初日(4月18日)は、JA徳島の会議室での意見交換会だった。JA徳島の森下課長や二木課長補佐(おふたりには、埼玉まで来ていただきプロモーションに参加していただいた!)と、ヤオコー店頭での「すだちプロモーションの成果」を情報共有する場を設定させていただいた。
 二年間で、明確になったことは、以下のようなものだった。なお、花畑さんがまとめてくれた、すだちプロモーションの記録は、法政大学の地域研究センター(2010年度)の報告書になっている。来月になれば、一般にも入手可能になる予定である。

(1)ほとんど知名度のない地域でも、「すだち」は売れる!
 試食販売(マネキンさんをつけての販促)を実施すれば、PI値(100人当たり購入率)は、5~10になる。販売時期も実施店舗にも例外がない。全部この数値におさまった。
 つまり、一日の来店客数が3000人程度の店であれば、約200人がすだちを購入してくれる。来店客が5000人を超える大型店(年商30億円以上)ならば、約300人がすだちの購入客になる。一日の売り上げは、3~6万円の幅である。これ以上でも、これ以下でもない。

(2)実演して商品説明をすれば、セルフ販売でも売れる
 すだちを売るためには、(3)で述べる「情報提供」と「食べ方提案」がポイントである。ヤオコーにある「クッキングサポートコーナー」のような、メニュー提示ができる場所を持つ食品スーパーならば、セルフ販売でも、まったく知名度のない、すだちを売ることは可能である。
 料理メニューを示すことで、PI値は、3~5を獲得できることがわかった。一日の売り上げで見れば、2万円程度である。費用対効果はかなり高くなる。問題は、クッキングサポートコーナーの担当者を説得できるかどうかにかかっている。

(3)買ってもらうには、すだちの食べ方提案が必須
 関東の人は、すだちの食べ方を知らない。わたしも、一昨年まで知らなかった。知っている人でも、すだちは、さんまなどの焼き魚にかけるか、マツタケの土瓶蒸しに使用するかの副食材とみている。 餃子や豆腐、牛肉やおしんこにかけてもおいしいこと(実際においしいのだ)を伝えなければならない。
 そのためには食べ方の提案(実演と冊子)が必要である。逆に、メニュー提案があれば、商品の良さは伝わる。さらに、まとめて購入してもらう(20個、40個)には、保存方法(ジップロックに入れて冷蔵庫の補完すると1か月は持つ)を示してやらないと、一度の販売数は数個にとどまる。いちどにたくさん売るコツは、保存方法の説明であった。このことは、以下で述べる。

(4)購入パッケージのサイズ(入数)は、最初の投入時と二回目とでは異なる
 すだちが旬の8月前後を想定する(出荷価格が10~15円/個の時期)。一般に、関東ではすだちは3個パック(99円~120円)で売られている。しかし、試食をさせて店頭販売する場合は、198円あるいは298円(10個ないしは20個入り、そのときの相場による)のパックを主体にすべきである。
 2009年度の3か月販売テスト結果によると、知名度があがってきた二回目の投入では、500~600円の箱売り(1KG,40個入り)も販売できる可能性が高いことがわかった。プロモーション時には、3個入りを主体に販売すべきではない。この売り方は、プロモーションが終わったあとで、ふだんの買い物(当用買い)に対応するために作ったほうがよい。

(5)品質とサイズのトレードオフ
 徳島の現地で知ったことだが、関西地方では、2Lサイズ(表皮が薄いジューシーで小ぶりな玉)が好まれる。料亭で出てくるのは、この2Lサイズである。しかし、食品スーパーで二年間、販売してみた経験では、関東地区の消費者は、徳島とは違ってむしろ、3Lサイズ(ごつごとした緑の表皮で大ぶりな玉)を好むことがわかった。
 関東人で家庭用に好まれるサイズは、徳島県人の感覚や業務筋(料亭やレストラン)が求めるものとは異なっている。ならば、徳島基準では品質的に劣っているとされる3Lサイズ(収穫全体の3分の一を占める)を、関東の量販店では積極的に販売する価値があるのではなかろうか。
 なお、3Lサイズは、現状では市場出荷をすると二束三文の値段になる。あるいは、2Lとの抱き合わせ販売になる。したがって、3L在図の場合は、仲卸を経由して、直接量販店と相対取引する道を探ったほうが有利販売になりそうである。

(6)値ごろ感は、一個20円~30円(8、9月の露地もの)
 二年間のテスト販売でわかったことは、すだちをほとんど知らない関東の消費者にとっては、およそ20~30円くらいがすだちの値ごろ価格だった。10個入りで198円あるいは298円である。また、箱売り(1KG、40個入り)の場合は、500~600円で店頭では爆発的に売れた。 
 この価格は、徳島の8~9月の実勢価格と比べると、やや高い印象をうけるかもしれない(徳島では、箱売りが400円前後になるらしい)。しかし、すだちの食べ方を知り始めたばかりの消費者にとっては、この価格が値ごろである。決して安く売る必要はない。しかも、利幅の高い3Lで売ればよい。

(7)一度すだちを買ってくれた消費者は、翌年も購入してくれる
 初年度(2009年)にプロモーションを行った上里店では、二年目は何の特別なプロモーションも行わなかった。単に、商品(3個パック)を棚に置いただけだった。しかも、値段はやや高めの設定だった(一個当たり20円→30円)。
 ところが、プロモーションを行った前年と比べても、その2割の売り上げが確保できていた(2008年度はほぼゼロ)。つまり、市場がいったん開けると、翌年にも、20%の残存効果があるということである。プロモーションの対費用効果は、経年で考えるべきである。翌年に仕掛けを変えれば、もっと売り上げをあげることさえ可能である。

(8)プロモーションですだちを買ってくれた消費者は、翌月も購入してくれる
 2010年、2店舗(埼玉二店舗)で、8月の最終土・日曜日のみに、マネキンを使った試食販売プロモーションを実施している。その後は、両店では特別なプロモーションを実施していない。ところが、その翌月にも、前月と比べて2割のすだちの売り上げがあった。
 さらに、10月には、8月の15%の売り上げが両店で記録されている。プロモーションは、当該年の二か月後にも継続していたとみられる。(7)と同様に、すこし仕掛けをすれば、月を隔てた残存効果はもっと高まるかもしれない。

(9)売り上げは予測可能で、店舗規模に比例する
 試食販売での売り上げは、完全に予想できるものであった。どの店舗どの時期でも、PI値が5~10で安定している。あとは、値ごろ感にあった商品が提供できるかどうかにかかっている。フル販売とセルフ販売を組み合わせると、すだちは、知名度の低い関東地区でも十分売れる食材である。
 
 以上、現地の報告会で、プロモーションに参加したメンバーの共有情報をまとめてみた。

 なお、二日目(現地視察)の様子は、明日、報告したい。