事業計画の立案と実ビジネスでの成功: 大学院生たちのプレゼンを聞いて

 院生たちのビジネスプランのプレゼンが、本日で最終日を迎える。わたしが指導した学生たち7人の発表は、初日に終わっている。昨日と今日は、他の先生たちの学生のために、各30分ずつの発表を聞いている。


わたしがいつも感じるのは、彼らのプレゼントをどのように評価してあげるかである。約60人の卒業生たちは、この発表(予選)を終えたあと、選ばれた10人だけが、ボアソナードタワーで最終プレゼンテーション(本選)を行うことになる。
 甲子園出場をかけた地方大会予選から、大阪に行くことを目指して、いま戦っていることになる。わたしは、だから、この予選・本選の勝ち上がり形式を、ひそかに「イノマネ甲子園」と呼んでいる。

 修士論文の発表の場が、「ビジネスプラン・コンテスト」のようになっているのである。本選は、15分の発表会で、金(1人)・銀(2人)・銅(3人)メダルを競うことになる。もっとも優れた作品(ビジネスプラン)には、奨学金が還付される。
 わたしたちの大学院(イノベーションマネジメント研究科)には、「プロジェクトアドバイザー」という制度があって、現役の企業家の方に、最終発表会(3月1日)での学生たちのプレゼンを審査していただいている。
 アドバイザー(身分は、特別客員教授)にお願いしている評価基準は、プロジェクトの内容と事業の実現可能性である。もちろん、プレゼンのうまさも、それに加味される。

 しばしば、私たち指導教授の評価と、アドバイザー(実務家)の客員教授の基準にずれが生まれることもある。実際にもそうである。予選会のトップが、かならずしも最終選考会で金賞を獲得できるわけではない。本選と予選には、「持ち越し点」はないのである。
 企業家(起業家)の方たちは、プレゼンの上手さとプロジェクトの実現可能性を軸に、選考をしているように見える。わたしたちの評価軸は、それとはちがっている。論文としての完備さや、論理的に矛盾がないこと、リサーチの詳細さなどが、評価点の高さに反映される。

 さて、イノベーションマネジメント研究科は、創設から7年になる。これまで、最終選考会でトップ6に選ばれたビジネスプランから、実社会で成功した実例がない。それが残念である。今年のプロジェクト優秀者からは、少なくともビジネスとして「立ち上がるプラン」が選ばれることを願う。
 実は、表彰されない事業計画が、実際には成功している例がたくさんある。有名な例は、フェデラル・エキスプレスである。修士論文のアイデアは、ビジネススクールの指導教授たちからは「C判定」を受けた。しかし、FEDEXの事業は大成功している。
 スクール長からの願いである。最終発表会での勝利も大切だとは思うが、アドバイザーたちの評価には関係なく、実事業での成功のほうを期待する。実現しない計画は、優秀な事業プランとはいえない。
 「おまえさん、そのプロジェクトは本当に実現する気があるの?」としばしば問いただしたくなる。
 そのような気持ちで、本日、あなたたちのプレゼンをわたしは聴いている。