トルコ旅行日記#5: 宗教戦争と洞窟の町、カッパドキア

  海外に来て5日くらい経つと、体がその土地の陽射しや湿度に適応できてくるものだ。毛穴の開きぐあいに、なんとなく違和感がなくなる。


朝の7時。ずいぶん朝早くから、気球が空に浮いている。ホテル前のサッカー場はホテルの持ち物らしく、「ジョギングコースがないか?」とたずねたら、「自由にお使いください」との回答。
 芝の上を軽快に走りながら、赤と白の絞模様のバルーンが、青空に舞い上がる様を眺めていた。風はほとんどない。ガイドのアリさんが、盛んに勧める気球の遊覧飛行は、一時間が220ユーロ、約3万円。日本人はたいてい乗るんだろうな。
 私は、高所恐怖症だから、まずだめだ。よくぞそのむかし、ヘリコプターを操縦したものだ。

 昨日の午後は、カッパドキアの洞窟群を見学した。2~10世紀に作られた洞窟は、イスラムやエジプト、アラブ人に迫害されたキリスト教徒が隠れ住んでいた場所だ。
 キリスト教徒の西側諸国と西アジアのイスラム教徒とは、この時代から衝突を繰り返していたことがわかる。政治と宗教は切り離せない。軍事的に重要だったトルコの地を巡って、ふたつの宗教と文明がぶつかった跡が、カッパドキアの遺跡である。

 カッパドキアの遺跡を訪れる民族構成がおもしろい。洞窟入口に掲示された言葉は、4か国語。英独仏伊。国旗が付いている。皆さん、ほとんどがツアーで来ている。
 世界中から来た、年寄りの団体観光客である。ドイツ語が優勢(5グループ)、イタリア、スペインが次であ(3G)。英語圏が3番目(2G)。韓国語(1G)、日本語(1G)だった。中国語は聞かなかった。丘の上から見る駐車場に並んだバスの列は、壮観だった。
 しかし、欧州からこの土地をたずねてくるクリスチャンは、迫害の跡をどうみるのだろうか。観光案内人は、カッパドキアのトルコ人である。90%は、迫害した立場にあった人達である。十字架に張り付けにされたキリストの姿を説明している。
 案内人たちと、案内されるひとたちは、かつては戦っていた。いやいや、宗教戦争は、いまでも進行中だ。

 日本人など、東アジア人には、いまひとつピント来ない。いや、キリスト教徒が多い韓国人は別なのかもしれない。