先週の週末の土日,「日本マーケティングサイエンス学会」の全国大会があった。午前中のセッションの一部を除いて、ほぼすべての報告(並行セッションの場合はA会場かB会場かのどちらか)に顔を出した。これまでは、聞くために大会会場に座った報告には、必ず質問をするようにしていた。それが、理事としての作法だと思っていたからである。
しかし、今回は、自分がコメントを任された報告以外(2日目の長島さんの報告)には、一度も質問をせずに終わった。理由は、ふたつあった。
ひとつは、若い先生たちがどのような質問をするのかを見たかったのである。年寄りのわたしたちはあまり「でしゃばらないほうがよい」と思った。それと、本音のところでは、なんとなく質問をする気分になれなかったからである。(例外は、中島先生(大阪大学)と山田先生(京都産業大学)が司会を担当した「製品の普及に関する研究セッション」)。
発表された報告のほとんどが、結果が見えた「結論づくり」のためのリサーチだった。だから、基本的に驚きがない。あるいは、サプライズやわくわく感が不足している。発表には時間を掛けているのだろうが、それは、発表や報告、論文の数を増やすためのリサーチでしかない。マーケティングサイエンスという学問が、行き詰っているのかもしれない。そう思うくらいの感覚である。
特定の学問分野にも、ライフサイクルはある。テーマや課題がたくさんあって、未開拓の研究分野がつぎつきに現れる時代があった。しかし、いまや課題も方法論にも飽和感がある。参加者の数が多いのは、実務的にも期待感があるからだろう。だからこぞ、若い研究者はテーマや発表の仕方で、感動と驚きを与えて欲しい。
言いたいことは、ひとつである。思っても見なかった結論を導き出してほしいのである。また、取り組むテーマもまともにすぎている。誰も歩いていないフロンティアをめざしてほしい。日本でも、サイエンスの本家である米国でも、その点では同じである。フロンティアの喪失なのか、研究テーマの自己限定なのか、現状には重たい閉塞感がある。
同じ思いを、わたし自身が研究者になりたての30年前に感じていた。ところが、その後、研究を進めていく過程で、マーケティングの分野には、取り組むべき課題は、まだまだたくさんあることに気がついた。皆さん、手馴れた課題を取り扱いすぎている。誰も思いつかない、しかし、社会的に有用なテーマを発見する能力を開発してほしい。本日は、ちょっときついコメントになった。若い研究者のみなさん、とくに中堅のリサーチャーには、もっとしっかりやってほしいと思う。