カインズ土屋裕雅社長とのインタビュー記録「10年先を見つめた新たな価値創造のためのマーケティング」

土屋裕雅社長(カインズ)とのインタビュー記録が上がってきた。社内報『四季報』の特別対談記事である。6ページとずいぶん長い。カラー版である。2009年秋号として、来月刊行の予定である。そのまま本HPに掲載というわけにはいかないが、そのエッセンスがおもしろいので、ポイントだけ紹介したい。


土屋さんとは、GRC=「群馬レーシングチーム」(ダイヤモンドフリードマン社、千田編集長の命名)の所属で、年二回、群馬県民マラソンと前橋ハーフを一緒に走る仲間である。お互いに負けず嫌いなところが、とてもよく似ている。群馬と秋田で、年齢も一回り離れているし、子供時代の育ち方もちがっている。しかし、どちらも基本的には商人の息子であるから、商売=事業に対する感覚は共通のものを感じる。EDLP派(土屋さん)と付加価値派(小川)の違いはあるが、システム志向は同じである。
 今回の対談の一つのポイントは、PBに対する取り組みの姿勢を、土屋さんが説明しているところである。カインズが目指すべきPBの方向性は、「単なる価格が安い商品ではなく、ユニークな商品の開発である」というのが、わたしの主張である。その点で、対談中ではふたりとも一致を見ている。土屋さんのPB路線が、世間から誤解を受けないように祈りたい。というのは、近頃、土屋さんがマスコミに顔を出すことが多いからである。メディアは、それ自身が主張したい文脈で報道をすることがあるので、カインズのPBについては、若干の説明が必要ではないかと思う。
 もうひとつは、都市型ホームセンターの課題についての議論である。葛西のSUNAMOを見せていただいたあとで、わたしからは率直に感じたことを土屋さんにぶつけている。都市型HCのニーズは、居住空間(の狭さ)と買い物手段(徒歩か自転車)に成約されること。提供すべきサービスと商品のタイプ、サイズが小ぶりになる。したがって、客単価は低くなる。その一方で、人口は稠密である。
 売れる商品も、郊外型HCモデルとは違ってくる。例えば、ベランダが小さいので、園芸や家庭菜園とは言っても、インドア向けで商品仕様は、組みあわせのキットになったものが売れたりする。ペットも基本ニーズは、やはり都会的な需要を考えないといけないだろう。大型商品のデリバリー、修繕サービスなどは、都市型HCにとっては不可欠な様相であろう。 なお、中間部分では、マーケティングとマーチャンダイジングのちがいに触れている。土屋さんのお父様が、ベーシアグループ企業で、マーケティング部を作った話など、わたしは知らなかった。ユニクロのように、カインズも、技術的に優れた「驚きの商品」を開発するマーケティングカンパニーになってほしいものである。
 この対談は、楽しかった。「先生とこんな仕事の話をするのは、はじめてですよね」(土屋さん)が、四季報には乗らないが、ふたりの対談の締めくくりの会話であった。たしかに、いつも走って、飲んで、しごとのことはなし!であるが。