「特集:ヤオコー」『スーパーマーケットの店長会議』(2008年2月創刊号:『Value Creator』別冊)(★★★★★)

5月2日に、ヤオコー本社(川越)に行ってきました。川野幸生会長に連載スタート前最後のインタビューをするためでした。次回訪問は、再来週の15日(木曜日)、川越の研究センターにお邪魔します。パートナーさんたちの「事例発表:感動と笑顔の祭典」を見せていただくためです。きっかけとなったのが、表題の『スーパーマーケットの店長会議』を取り寄せて読んだことでした。


総特集:ヤオコーの記事では、「パートナー(パートタイマー)を戦力として生かせ」が掲載されていました。組織運営、とくにパートタイマーの戦力化に悩まれている経営者の方にはお勧めの一冊です。雑誌記事のまとめですが、一冊の本としてみてもよくまとまった内容です。川野会長自身、4月24日のご自身の誕生日に、ご家族との会食でヤオコーの組織についてよく書かれているということで推薦したそうです。その後、ご家族が読んだかどうかは確認していません。幸夫会長や清巳社長のしごとは、案外とご家族はわかっていないものです。
 ヤオコーの特集が組まれている76~135ページは必読です。とりわけ、第2部「人づくり編」と第3部「現場強化編」は、注意して読んでください。ヤオコーがパートタイマーの戦力化に優れていることは、川野会長がスーパーマーケット協会の副会長に就任してから、世間でもよく知られるようになっています。しかし、そのルーツについては、あまり知られていないようです。パートナーさんの活用実態と動機づけの方法が、特集記事でうまく説明されています。詳しくは、ヤオコーの特集をごらんください。
特集記事を読んでも、よくわからなかったことがありました。それは、従業員を大切に扱うようになった理由です。ヤオコーは創業50周年を迎えた昨年、ハート従業員さんの全員(約1700人)に、株式で約20億円分相当額を賞与として分与したことなどの理由です。
 今回の川野会長インタビューの狙いはその一点でした。昭和44年に、マルエツで1年半修行後、実家に戻ってきた川野会長は、“焦り”を感じていたそうです。会社としては、まずまずの業績をその当時でも上げていましたが、人材不足には頭を痛めていました。会社が小さいので、なかなか優秀な人材が集められない。その間に、先行している競合他社(ダイエー、IY、西友、マルエツ、与野フードセンター、マミマートなど)は順調に成長している。
 埼玉の田舎町の企業が「リクルート誌」に当時の経常利益の3分の1を投じて、大卒募集の広告を出したのが1975年。翌76年には大卒一期生7人が入社したそうです。しかし、現在まで会社の幹部として残っているのはわずかに3人です。
 「その後、大卒を採用してもつぎつぎと退職していったのが、経営でいちばんかなしかったことかな。小さな会社だから、長時間のサービス残業、十分な教育ができなかった。脱落して行った人たちには申し訳なかったと当時も今でも思う」(川野会長)。
 その後に、大卒一期生たちには決算賞与(株と現金)を与えたが、株式公開後に社員となったり、パートナーさんとして働いてくれたひとたちには十分に報いることができていない。そう感じての社員への株式譲渡だったそうです。「小売業は楽しい、と思ってもらいたい」(川野会長)
 当たり前のことですが、小売業の経営者にはなかなか言えない言葉です。社員と仕事への愛情でしょうか。こうした経営者は、いまでは稀有のように思います。