創業者社長の交代

2月末から3月初旬にかけて、新聞紙上では毎日のように新社長が誕生していることが報じられている。30代、40代の若社長さんが続々登場していることに好感が持てる。


うれしかったのは、法政の社会人向けビジネススクールの卒業生から、スカイマークの井上社長(41歳)が誕生したことである。単体の経営環境だけでなく、航空業界そのものが困難な状況にあるだけに、BA出身の井上新社長の手腕を心配しながらみている。数年前に著書をもらったことを思い出し、彼の栄転を喜んでいるところである。
 ところで、日頃から懇意にさせていただいている創業経営者が、後進に道を譲るケースが増えている。日本の流通サービス業は、1970年代の前半に創業された企業が多い。そうした企業の経営者が60歳代後半になり、引退のときを迎えている。社長交代には、年齢的な要因が大きいとみている。例えば、田谷の田谷哲也社長、ハックキミサワの石田健二社長、すかいらーくの横川紀夫副会長、ファーストリテイリングの柳井正社長は、4月から経営の第一線から退くことになっている。
 彼らの行動を見ていて、一昔前の経営者と判断の違いを感じる。以前の経営者のようには、必ずしもご子息、兄弟、あるいは親類縁者の中から後継者を選んで、経営の実権を譲っているわけではないことである。それどころか、田谷社長のケースを除くと、彼らの後継として選ばれた人物は、会社の生え抜き社員だったり、新しくスカウトしたきた外部の優秀な人材だったりする。しかも、30代、40代の新社長も少なくはない。
 これと比較してみると、大手製造業や金融・保険業では、新社長の平均年齢は相も変わらず高い。創業経営者ファミリーを除けば40代は例外的で、私と同期の経営者などはほとんど見かけない。ということは、日本企業を全般的にみれば、人事に関してメーカーは相変わらず保守的なのかもしれない。かつて光り輝いていた大企業は、人材登用の面でも魅力を失っているのだろう。
 内部改革が厳しい状況にあるのも当然であろう。年寄りが黙って去るしか、若者が力を発揮できる場を作り得ないからである。51歳にしていま自分も、研究者として、また、ひとりの大学人として、見苦しくない引き際を考え始めている。