米国版MPS: Veriflora(環境認証マーク)についての最新情報

 テキサス州オースチンを訪問している際に、アーノスキー農場で”Verflora”の存在を知ることになった(本HP8月参照)。Verfloraは、オランダのMPS(環境対応型の花栽培技術)の米国版である。


MPSの日本への導入については、カリフォルニア在住の日系一世・アンティ松井と議論を戦わせているところである。アンディからVerifloraの存在を知らされていなかったが、2年前からこの制度は存在していたらしい。
 実践する場(有機栽培の花を販売する機会)がなかったのが原因で、世間の注目を集めることはなかったとみられる。認証農家が出荷した切り花の本数は、二年間で約7千万本と報告されている。状況に変化が起こったのは、今年になってから、「オーガニックブーケ・コム」が、ネットで有機栽培の花を専門販売することを着想したことである。欧州に比べて「環境コンシャス」な人が少ない米国で、ほとんど非現実的と考えられていた花の有機認証制度が実現したのである。
 本日、ボール社が発行している’FloraCulture International’の2005年9月号が研究室に到着した。Verifloraの認証制度については、ほとんと気が付かずに見逃してしまいそうな小さな記事として紹介されていた。日本の業界関係者に対して、最新号の記事内容をダイジェストでお知らせすることにする。また、わたし自身がネットと個人的なネットワークを使って調べた関連事実をお知らせしたい。なお、いくつかのサイトについては、URLを添付するので、興味のある方はネットを通して詳細を参照されたい。
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 米国初の花き栽培認証マークであるVerfloraは、「米国科学認証組織」(SCS: Scientific Certification Systems)が認証する数あるマークのひとつである。SCSそのものは、米国ではじめて残留農薬を検査するために1994年に創設された第3者機関である(http://www.scscertified.com/)。生鮮食品などの農産品(林産品、鮮魚などの海産物、農産加工品を含む)の環境保全マネジメントの監査を実施している。それなりに権威のある農産品の認証機関であることは、スターバックス・コーヒーが認証された豆を自社製品に採用していることからわかる。農業分野では、かなり影響力が強そうである。
 Verfloraは、SCSと「オーガニックブーケ・コム」(https://www.organicbouquet.com/)が共同で運営している認証マークである。というのは、SCSが認証した農場(現在米国加州2農場、エクアドル2農場)で生産した有機栽培の花き類を、オーガニックブーケ・コム社が、インターネットを通して会員向けに販売しているからである。ちなみに、わたしも先程(午後11時)、自宅PCから「organicbouquet会員」の登録をしたので、登録終了のメールがそのうちに届くはずである。
 米国の2社は、サンバレー・グループ(http://thesunvalleygroup.com/)およびケンドール農場(http://www.kendall-farms.com/)である。両社ともに、カリフォルニアにある大規模農場である(サンバレーは、オランダからの移民経営者)。球根切り花や草花類を米国全土に出荷しているが、かれらは生産者であると同時に、ブーケメーカー(花束加工業者)でもある。ホームページを見る限りでは、最近の米国有機栽培農家の特徴で、M&Aを繰り返して大規模化したものと見られる。
 SCSの関連サイト(http://www.scscertified.com/csrpurchasing/veriflora/)を見ると、プレスリリースの紹介がある。それによると、そもそもオランダのMPSと比べて、持続可能な農業基準として、SCS認証標準はMPSより厳格なように見える。
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「持続可能農業の6つの基本原則」
(The Core Principles of Sustainable Agriculture)というタイトルで、
以下のような基本原則が述べられている。

 原則1: 先進的な農業実践(Advanced Agricultural Practices)
 原則2: 水資源の保全(Conservation of Water Resources)
 原則3: 環境資源の保全. Conservation of Ecological Resources
 原則4: 正しい廃棄物処理(Waste Management)
 原則5: 社会的責任の遂行(Social Responsibility)
 原則6: 品質基準の実現(Product Quality)
 
 オランダのMPSで直接カバーされているのが、原則1~原則4である。原則5と原則6は、それぞれが欧州ではEurepGapやFlorimarkでカバーされている。したがって、Verifloraの認証基準は、現状はMPSが3つの別基準で運営しているものをすべて包摂するものである。FloraCulture International の記事(P.7)は、両者が融合して国際認証基準となる可能性を示唆している。
 なお、EurepGapのフラワー部門の会員は、オランダのCBI、ドイツのメトログループ、スイスのCOOPとミグロス、イギリスのマークス&スペンサー、テスコ、サマーフィールドの3社である(2005年8月現在)。また、Florimarkは、オランダの小売り・卸・輸出業者の52社が採用している流通品質基準である