仕事のキャンセル

ここのところ、仕事面で企画していた仕事をキャンセルされることが妙に多くなっている。何かにたたられているのではないか、と疑いたくなるほどの不運が続いている。


昨日はパリから電話が入って、6月18日に実施予定の「JFMA国際セミナー」のフランス人講師が日本に来れない可能性がでてきた。アマール講師(モンソーフラワー)の母親が危篤との急報である。彼の参加がないと、講演そのものを中止にせざるをえないかもしれない。
 今回のような不測の事態が起こることを避けるために、わたしは常々、交渉ごとに対してさまざまな保険をかけておくことにしている。海外から講師を呼ぶ場合は、国内での依頼以上に細心の注意が必要である。発想のヒントは、「信頼の構造」をどのように作り出すかから来ている。人間が他人を信頼して、最終的に裏切り行為に走らないのは、以下の3つの状況が作り出せた時である。「それって信頼?」と疑問を呈されるかもしれないが、わたしなりに工夫をしているつもりではある。

(1)経済的な絆
 今年9月に、ケロッグスクールのブラットバーグ教授を日本へ講演者として呼ぶことを画策している。有名人を講師として招聘できるかどうかの瀬戸際である。しかし、おそらく決め手は講演料である(いくらまで払う用意があると思いますか?)相手の欲望と機会費用(たとえば、代替案として欧州講演、国内のコンサルティング)を考えて、言い値ではない妥当な金額を提示することはそれほど難しくないだろう。経済的なインセンティブははっきりしている。
 経験的に言えることは、金銭的な動機にプラス、エンターテインメントの要素を付加しておくことは悪くない。外国人講師に対しては、一日東京近郊(浅草、鎌倉など)の観光地アテンドと温泉宿泊(きわめてクラシックな温泉がよい)をオプションとしてアナウンスしておくのが常套手段である。JPG写真をe-mail添付してあげれば、来日は確実である。
(2)心理的な絆
 海外から講師を呼ぶときは、その前年ないしは数ヶ月前に現地に行くことにしている。実際にその人物に会って、「取材」しておくことが普通である。これをしないで、紹介だけに頼って手紙とe-mailで連絡をしていると、キャンセルをくらうリスクを抱えて仕事をしなければならなくなる。前もって、相手との心理的な距離を縮めておく必要がある。心理的な絆が構築できていれば、とうにもしようないときでも、誰か代理人を派遣してくれるチャンスが残されている。
(3)構造的な絆
 仕事の面で、相手のスケジュールを縛ってしまうことである。これには、さまざまな方法がある。信頼関係が希薄な場合は、相手を構造的に拘束するしか手がないときもあるからである。わたしの場合、数年前にフィリピン政府から講師として呼ばれたことがある。日本のフィリピン大使館から電話が掛かってくるは・・・講師の仕事を受ける前から切符は送られてくるは・・・当日になって空港に着いたら、わたしが観光でいなくなってしまうことを心配したのか、政府派遣の車に「拉致」されて、果てはセミナー会場まで連れて行かれる始末。その日は、ホテルに缶詰にさせられて一歩も外に出られなくなった。ところが、セミナーが終わったら、空港までの見送りの車はなく、ひとりも挨拶に来てくれなかった。

 さて、18日のセミナーはどうなりますか? 地方からの参加者も多く、10日現在、約80人の有料入場者(参加費2万円)を確保している。報道関係者、招待客を入れると100人の参加が見込まれている。