クラフトビールが一番売れるのは12月:ビールの店売りについての意外な事実

 大学院を卒業した後、京王線の沿線でクラフトビールの製造販売をしている「シェアードブルワリー」の小林大介君から、ビールの売上について意外な事実を知らされた。先月、次回のアフターゼミ(昨日の11月24日)で発表を依頼するメールを出してあった。小林君からは、「11月はビールのフェアがあって都合がつかないので、12月してほしい」との返信をもらっていた。

 

 小林君にメールを出したのは、10月の中旬ごろだった。そのときに、12月のゼミで、最近の会社の業績を話してほしいと頼んであった。いつの間にか、小林君が会社を創業してから7年目になっている。わたしたち3人(平石、大久保、小川)の指導教員は、少額ながら、小林君を助ける意味もあって彼の事業に出資もしていた。

 しかし、当初のビジネスモデルを転換するまでに時間を要していた。その後は、本人がけがをしたりで、事業的には長く苦しい時期を過ごしていた。コロナの時期に、オリジナルの事業モデル(クラフトビールの醸造体験を提供する)を転換して、設備を拡張してオリジナルブランドとOEMモデル(レストランなど相手先ブランドでの販売)の混合モデルに転換していた。

 わたしは主たる指導教員だったこともある、しばしば業績についてのレポートをリクエストしていた。今年に入ってからは、7月以降、月の売上が200万円を超えてきていた。アフターゼミで発表するタイミングだと思っていた。ところが、当初依頼した11月だと、27日も八王子でビアフェスがあるらしく、「発表はイベントシーズンが終わってから」との返答が戻ってきた。

 

 業績は好調のようだが、寒くなってからの売上が気になった。何となく小林君に尋ねてみた。「寒くなったので、ビールの売れ行きは大丈夫ですか?」(小川から)。どんな返答が戻ってくるかと思っていたら、意外な事実を知らされることになった。

 「週末は客数半分くらいになりました。来週末は、川崎駅前で今年最後のイベントです。12月の店売り頑張って、シーズン終了ですね」(小林君)。イベントは12月中旬で終わるらしい。たしかに、今日のように寒いと、土・日でも、ビールを飲みに公園などの会場まで出かけていく気にはなりそうもない。 

 

 しかし、その後のメールの文面は、つぎのようになっていた。

 「意外かもしれませんが、店は12月が年間で1番良いです」(小林君)。怪訝に思ったわたしは、「そうなんですね。なぜですか?」と尋ねてみた。

 「正月用・帰省・お歳暮用など、缶ビールの売上が伸びるのが要因ですね。クリスマス前後は店内も活気があります」(小林君)。そうか、ブームが一段落したとはいえ、お歳暮にクラフトビールを送るニーズはそれなりに大きいのだろう。このごろ

は、大手のキリンやアサヒなども、クラフトビールの事業に乗り出している。

 小林君のように、自社ブランドのビールを製造している小さな会社でも、そうしたニーズには答えることができるだろう。そのために、設備投資をして規模拡大を試みている。いまのところは、当初の設備を2~3倍に拡大したことプラスに作用しているようだった。

 

 しかし、最後に落ちがあった。「ですが、その反動で1月は1番売上低いです」(小林君)。

 年末年始でしこたま酒をのんでしまう。自分の体内の「アルコール消化タンク」が満杯になってしまう。正月が明けると、何とはなしに摂取するアルコールも減ってしまう気がする。

 ちょっとニッチな感じがあるが、クラフトビールも同じ傾向があるのだった。

 

 

 <追加:蛇足>

 このメールと同時に、10月14日に錦糸町で開かれたビアフェス(隅田jazzフェス@錦糸公園)について、興味深いデータを教えてくれた。

 「このビアフェスは、数万人が来る大規模イベントだそうです。国内20社以上のブルワリー、キリンとアサヒビールの直営店が出るそうです。過去の経験値では、来場者に対して1~5%が客になるという計算です」(小林君)。

 過去4万人規模のイベントでは、2~3千人の販売実績があるそうだ。錦糸公園のイベントでは、4万人を想定しているらしかった。競合が多そうなので、小林君は、1000人で売上100万円を目標にしていた。今度会ったときに、結果を聞いてみることにしたい。

 ちなみに、この規模の出店料は、20万円だという。売上に対する賃料率は20%になる。通常は、売上に対して15%~20%だという。賃率は、百貨店並みである。