テキストの出版から12年。10年を経過しても、この本は順調に版を重ねてきている。拙著『マネジメントテキスト マーケティング入門』(日本経済新聞出版社)は、いまや10刷。それでも事例がずいぶん古くなっているので、そろそろ売れなくなるだろうと思っていた。ところが、思わぬことが昨日起こった。
お隣の国、韓国からテキストを翻訳したいとの申し出が来ている。日本経済新聞出版社の堀口さんから連絡が来た。「翻訳は大したお金にはならないかもしれませんが」と。台湾や韓国でこれまで5冊、自著に翻訳のリクエストがあって、出版を経験している。それは知っている。日本語の出版以上に、翻訳は金にならないことはわかっている。
それより驚きだったのは、出版から12年が経過している本にニースがあることだった。マーケティングの分野は、日本でも変化が激しい世界だ。しかもお隣の国とはいえ、海の向こうの国の言葉である。翻訳者が「この本を翻訳したい」というモチベーションはどこから来ているのか?とても興味がある。
この話をもらって、やや反省すべきところがあると感じた。2009年から何年かして、仕事仲間からは「マーケティング入門の改訂版を出してほしい」という切実なリクエストをもらっていたからだ。出版元の日本経済新聞出版社にも、「改訂版を出しましょうか?」と提案したことがある。ところが、「テキストは売れなくなっていますからね」と、つれない返事だった。
たしかに、800頁弱の分厚い本で、税込みだと4000円になる大著である。改定も大変だが、売る方も今のままの方が楽ちんなのは目に見えている。なにせ、大学でサバティカルをとって、丸まる1年間、このテキストに充てた。たいへんな作業だった。
だから、そのまま放置しておいたのだが。当初は、5年くらいで改訂するつもりが、12年が経過してしまっている。
マーケティングの泰斗、コトラーさんやアーカーさんと張り合って、厚い本を出版した迄はよかったが、5年ごとの改訂目標は残念ながら実現できなかった。知的な体力不足だった。その他の仕事をしているうちに、海外のテキストライターと張り合えなくなってしまっている。
来年3月で、法政大学を退職する。そのあとは、時間がたっぷりある。もう一度、電子版でもいいから、マーケティングのテキストを改定する作業に挑んでみようかな。