がんもどきの逆襲

 相模屋食料の鳥越淳司社長と、さきほどまで研究室@市ヶ谷で打ち合わせをしていました。再来月(11月13日)から始まる大学院の「ビジネスリーダー育成セミナーⅡ」の準備のためです。鳥越さんには、11月20日に授業内での講演をお願いしてあります。その内容を相談していました。

 

 鳥越さんには、5、6年ほど前に大学院の「マーケティング論」で、「ざく豆腐」の商品開発の話をしていただいています。その時の講義録が、岩崎達也・小川孔輔編(2017)『メディアの循環』生産性出版に収録されています。

 今回は、当日にお話しいただく内容は、テキスト『True North:リーダーたちの羅針盤』に出てくるご自身のキャリアが中心になります。そして、もう一つは、テーマ討議のネタになるビジネス(商品開発)の事例になります。

 先ほど鳥越さんにお持ちいただいた第一候補(テーマ)は、2012年から取り掛かりはじめた「豆腐業界再生計画」でした。業界トップとして、豆腐の文化を守りきり、豆腐の未来を作る計画です。これまで、相模屋さんはM&Aの手法を通して、地方の豆腐屋さん7社の再生を請け負った実績があります。すべて黒字化して、復活させています。

 このスキームで、相模屋さんは、再生相手のお豆腐屋さんに対して、間接管理部門のサービスを無償で提供しています。いわゆるプラットフォームに当たる部分です。地方のお豆腐屋さんのほうは、豆腐の生産と自社のローカル商品の販売に特化することで、事業再生が簡単にできるのだそうです。いわゆる「シュリンク(縮小)&グロー(成長)戦略」を地で行く再生計画で実績を上げています。

 

 鳥越さんから提案していただいている2番目のテーマは、PBF(Plant-Based Food)の市場に、相模屋としてどのように取り組んでいくべきか?日本古来の植物タンパク質である豆腐の技術を、世界のPBF市場にデビューさせる目論見についてでした。

 米国のPBFベンチャー企業の代表は、インポッシブル・バーガーやビヨンド・ミートがフロントランナーです。彼らは、多額の投資と高度な加工技術で、フードテックに基づく科学技術で人造肉を開発しています。しかし、そもそも植物タンパク質から作った「肉もどき」(人造肉)に、肉々しい食感を与えようとすることには無理があるのではないか?

 「肉感覚」にこだわらず、たとえば、大豆由来のがんもどきを食するほうが自然ではないだろうか?ここは、わたしと鳥越さんが合意できるところでした。このテーマを、当日のグループワークで議論してもらうことになりそうです。