【柴又日誌】 #12:(続)東京下町へ移住して感じる意外な不便さ

 「柴又日誌(11)」で記事を書いたところ、友人・知人や研究者仲間から質問攻めにあうはめになった。下町のスーパーやホームセンターが、品ぞろえや接客がそんなにひどいとは信じられない様子。「7年連続、日本でいちばん住みやすい町(印西市)」の隣りの町(白井市)で快適な郊外生活を経験してきた者からみると、葛飾区の小売業のサービスレベルが驚くほど低くみえる。



 都心の地価が高騰したことが根本にある。新興の小売チェーンは、江東・台東・葛飾エリアでは新規の出店はできない。350坪~450坪タイプの店は、賃料が高くて建設できないからだ。サミットやマルエツなど、中途半端なサイズの店はある。しかし、総菜コーナーやベーカリー部門は売り場が狭い。インストア加工のキッチンスペースがとれないのだろう。
 消費者のほうにも問題がある。下町では買い物客が老人ばかりだから、むかしからの買い物環境が当たり前だと思っている。競争が激しくないのだろう。それをよいことに、店舗側も改装を怠っている。店員さんたちも勉強をしようとしていない様子。生鮮品の鮮度が悪いのが気になってしかたがない。
 もっとも、総菜店さんやパン屋さんが立派に経営していることも、チェーン店がいまいちな原因かもしれない。いずれにしても努力不足が目立つ。ライフとサミットに期待するしかないか、、、

 具体的に例を挙げてみる。高砂駅前のイトーヨーカ堂などは、創業者の伊藤雅俊さんが見たら、きっと大いに嘆くだろう。これがあのイトーヨーカ堂?と思ってしまった。帰宅途中にあるので何度か足を運んでみたが、品ぞろえもオペレーションもぼろぼろだ。
 昨年末のある日、調達「国産のぜんまいを買ってきて!」とかみさんから命令をされた。ぜんまいを調達するために近くのスーパーを走りまわった。そのなかでも、ヨーカ堂の食品売り場がいちばんひどかった。
 どの従業員に聞いても、惣菜売り場でぜんまいの加工品がある場所さえわからない。いわんや中国産と国産のちがいを知る由もない。あきれ果てて地元スーパー(アタックとかチェーン店はある)に行った。国産のぜんまいはあったが、値段がやたらと高い。
 仕方がないのでダイエーのグルメシティに回ったが、ヨーカ堂と同じで国産のぜんまいは置いていない。下町のおばさんたちは、中国産のぜんまいでOKなのだ。そう思って帰宅した。

 埼玉の食品スーパー、ヤオコーやベルクが、このあたりに店を出してくれないかな。生協の店でもいい。千葉あたりでは、競争がはげしいからそれなりに努力をしている。これからの東京下町では、老人たちがいなくなって空き地が増えてきている。
 うまくやれば、小売りチェーン用の小規模の空間が生まれてくる。セブンやファミマがたくさんあるが、もうコンビニはいらない。イオンのまいすばすけっとのような、トップバリュだらけの小規模店舗もいらない。
 値段は高いがは、場合によっては成城石井でもいい。本音では、「ヤオコーさんのような、品ぞろえのいい店がほしいなあ」とかみさんとは同意。最後は、ちょっと嘆きが入っている。