施設を見学して残念に思ったこと: 日本の植物工場は、”イケてない”

 同僚の平石郁生さんが、商品やブランド(あるいは人間や会社)を評価するときに好んで使う言葉がある。それは、「イケてる」か「イケてない」かである。英語では、イケてる=COOL(かっこいい)ということだろう。一昨日から丸二日間にわたって、植物工場の現場と施設を見学させてもらった。また、工場を管理運営しているひとたちのプレゼンを聞くことになった。

 

 わたしの結論は、植物工場の物理的な特性や性能はさておき、日本の植物工場は、デザインや設備の動かし方がクールではない。そのような印象を抱いて、二日間の工場見学を終えた。

 それとは、対照的な事例がある。施設のタイプは異なるが、来週(11月30日)、ロック・フィールドの神戸ファクトリーを京都女子大の学生と見学することになっている。数年前に、静岡県磐田市にあるRFのサラダ工場を見学したこともある。こちらは、とっても「イケている」のである。

 なぜならば、たとえば、ロック・フィールドの静岡ファクトリーには「ビオトープ」があったり、次郎柿が植えてあったりする。自然との調和を大切にしている。工場を運営するだけでなく、施設のデザインが思想性を明確に体現しているのである。それが、いま日本の各地に建設されている植物工場には見当たらないのだ。

 

 昨日は、大学院のゼミで、平石さんや小川ゼミの院生たちと、海外の植物工場の写真を見せてもらった。平石さんが顧問をしているINFARMや、わたしが事例として紹介しているSweetGreen(サラダ専門店チェーン)などである。彼らの店舗や工場は、一言でいえば、「美しい!」。そして、「デザインがCOOL」である。 

 WEBサイトもしかりである。HPで提供されている動画などは、工場の施設そのものより、そこで働いている人にフォーカスしている。また、来店する客が画像に登場する。つまり、「誰のために商品(野菜)が提供されるのか」が明確に画像を通してわかるようになっている。

 その点でいえば、日本の植物工場には思想性が感じられない。野菜を食べる消費者の姿が見えていない。つまり、誰のために何の目的で、人工的に野菜を栽培するのかが伝わってこない。極論すると、技術的なことはどうでもよい。それより、作る目的と食物を食べるたしかな理由を伝えてほしいのである。

 基本的に、日本の植物工場では、なぜがわからない食物を作っている気がする。それでは、世の中が受け入れてくれないだろう。