店づくりでむかしの職場の物まねはしたくない: 高橋さんのボンマルシェ船橋店にて

 友人の高橋祐介さんのお店(Bon Marche)を見てきた。場所は、JR船橋駅構内にある駅ビルのシャポー内。そのむかし、総武線で二つ先の下総中山駅に住んいたので、船橋周辺は土地勘のある場所だ。船橋駅前の西武百貨店(2月に閉店)にはしばしば買い物に来ていた。懐かしい街だが、いまやショッピング環境も様変わりの様子。

 

 小売店が同じ場所で長く商売を続けることは至難の業だ。花屋も例外ではない。かつて栄華を極めていた花やが、いまは見る影もなくなってしまった様子をしばしば見ることがある。
 北海道札幌市生まれの高橋さんも、小売店経営では苦戦をしてきた人のひとりだ。知り合いに誘われて、30歳代の前半で広告業界から花業界に転身した。その後も紆余曲折あって、現在の「フラワーショップいしざか、東京支社長」は、花業界では4度目の転職になる。

 

 元青山フラワーマーケットで同僚だった相棒の横田さんと組んで、いまはフルーリスト・ボンマルシェを11店舗展開するまでになった。それまでは、ドール関連のフレッシュフラワーズ(量販店スタイル)や、サザビーリーグの花店コロリスト(専門店業態)の事業企画を任されたこともある。
 久振りに会ってみて、高橋さんの仕事ぶりがすこし落ち着いてきた印象を受けた。オフレコの部分を除いて、高橋さんから聞いたボンマルシェの経営スタイルを皆さんに紹介したい。少しばかりユニークな店舗運営に特徴がある。
 ネットの情報がやや古くなっているので、「ボンマルシェ」の現状を簡単にお伝えしたい(詳細は、いずれJFMAの会報誌で全容が紹介される)。
  
 ボンマルシェは現在、都内に11店舗で、従業員は35名。池袋のような小さな店舗(2~3坪)から、昨日訪問した船橋店(14坪)のように大きな店までサイズはさまざまだ。高橋さんによると、「従業員の採用活動を積極的にしなくても、無料広告、口コミと、直接の売り込みで人は集まってきます」とのこと。
 花屋にしてはめずらしく離職率が低い。産休でいったん職場を離れた女性が、育休後も必ず戻ってくる。職場の雰囲気と待遇がよいからだと思われる。こんな花屋は、自由が丘のBloom&Stripesくらいだろう。お店回りの雰囲気が似ているかもしれない。
  高橋さんいわく、、、「店舗づくりに関しては、元の職場の物まねはしない」を原則としている。まず仕入れは、本部集中(@大田市場)である。多品種少量のアイテムを仕入れるが、商品はできるだけ標準化している。前職のチェーン店は、個店の仕入れで店舗を競わせる経営スタイルだった。ボンマルシェでは、仕入れが全店共通なので、店ごとに商品やデザインがバラバラなテイストにならない。

 

 そこで、つぎのような人事管理ができることになる。一人の従業員が、希望すれば複数の店舗に所属することができる。というか、店舗間の作業量を平準化するための工夫で、空いている手待ち時間を隣の店に移動して働くことができる(「全店ダブルシフト制」の採用)。これができる条件のひとつが、商品の標準化であり、ドミナント出店戦略である。

 現在の11店舗は、JR総武線沿線(千葉~船橋)と池袋・新宿エリアに集中している。そのため、多少交通費と移動時間をかけても、ひとりが一日4時間ではなく、8時間働いて収入を得るというモデルが成立する。従業員に対する待遇の維持と作業の標準化が同時に達成できているゆえんである。
  店のつくりも、元の職場との差別化を軸にデザインされている。外観も、ブリックではなくタイルを用いる。外装と内装には、アーモンドグリーンを基調色にしている。スチールのファザードやブリキのバケツは使わず、透明なグラスや木製の什器を用いている。包装紙には、ありがちな英字新聞紙ではなく、透明なペーパーが使用されていた。

 

 サザビーリーグ時代の失敗を教訓に、花店としてはおもしろい業態に仕上がっている。価格設定もやや高めだが、ラッピングされたブーケやアレンジに、お花がずっしりと詰まっている感じを受ける。商品にボリュームがあるので、買う人にはリーズブルな価格である。

 どことなく、コロリストのイメージを引き継いではいるが、商品もお店も、もっと生活に身近な感じのイメージがする。わたしが何度か買い物をした池袋のお店などは、年率+20%で売り上げが伸びているらしい。「船橋は開店したばかりで、まだ先は読めない」(高橋さん)らしいが、なんとなくいい感じで伸びていくような気がする。

とりわけ、閉店した西武の後に新しい店舗が開店すれば、人の流れも変わるだろう。問題は、船橋のお客さんがボンマルシェのコンセプトに共感してくれるかどうか。課題はそれだけだろう。