エアークローゼットの創業者、天沼聡さんに、大学院で二回目の講義をお願いした。2か月前の6月28日。昨年度は、不動産賃貸のエイブル(平田社長)との共同店舗@原宿を学生たちに体験してもらった。今回は、創業から現在までの振り返りを講義していただいた。基本コンセプトと事業モデルが講義内容。
講演からすこし時間が空いてしまっている。記憶にうろ覚えのところもあるが、わたしのメモ用紙をもとに、講義内容を文章化することにした。「2017年2月に登録者が10万人を突破し、累計の利用取扱高(小売りベース)が37億円になった」とプレスリリースがなされている。
まずは確認のため、aircloset (エアークローゼット)の「口コミ まとめ」サイトに飛んでみた。自社サイト内のモジュールに書き込まれているコメントを順番に読んでみた。この手のサービスにありがちな、「辛辣なクレーム(臭い)」などもたくさん書き込まれている。また、それとは真逆の「利用してよかった」という感動もコメントも多数ある。
サービスの紹介は、以下のようになっている(出典:weekly.ascii.jp)
「月会費が6800円なんですけど届いた服をすぐ着て、すぐ返すの使い方でもスムーズにまわって月3回ぐらいが限度でしょうか、それでも毎月1万円以上は洋服に使っちゃう私にはお得なサービスだと思ってます。
気に入ったお洋服は買い取りもできるみたいだし、これからサービスが0本格的にまわりだすのが楽しみです。」
出典:【服はレンタルする時代】スタイリストが選ぶ服が月額6800円で借り放題!おしゃれ女子必見!! – NAVER まとめ
天沼さんの講演だが、わたしのメモは以下のようになっていた。
1 事業をはじめた動機
コンサル会社時代の仲間3人と共同で創業
若い女性が抱えいる問題を、「価値創造のチャンス」として感じた
・シェアリング・エコノミーの台頭(買うより借りる)
・女性の働き方の変化(買い物する時間がない)
・コーディネイトに出会う場面を創出する
2 事業モデル
・ブランド企業との関係(直接取引)
・提携先 ネットワークの構築に特徴がある
①倉庫業者(寺田倉庫)
②クリーニング会社(ホワイト急便)
どちらも、aircloset向けの生産ライン、3PL
③クレジット会社(クレディセゾン)
・コンセプト=新しい洋服の推奨(Curation)と偶然の出会い(Serendipity)
そのためには、消費者との接点を増やすこと
消費者側の商品データを蓄積していく
言葉を変えると、エアクロのモデルの本質は、
「連続的な嗜好(テイスト)のチューニングモデル」
・提案する価値(CRI)
①Curation(推奨)
②Replacement(置き換え)
③Improvement(改善)
3 マーケティング手法
・FaceBookのみを使用
ニーズを作るモデル、VCから10億円を調達
・PR/IRは
SNSのみを用いた口コミ
・コラボレーション
サンプリング手法を活用、Sonyなど
配送用のボックスに、メッセージと試供品を同梱する
感動の創出、
・10万人のコーディネートデータを保有
・ビジネスが安定している理由
=<意図しないテイージング>
登録して最初の洋服が届くまでは、数か月の待ちが出ている。
4 事業の本質
・感動(デライト)を作る
単なるCS(顧客満足)の創出ではない
・データドリブン
テイストのチューニングモデル
・提案型のMD
80%が適応のMD、20%が冒険のMD
5 起業までのプロセス
①当たりをつける(Proving)
②社会的な意味を重視する
③実現可能性を大切にする(3か月)
<コメント>
①天沼さんの経営チームは、バランスがよく取れている。VCの受けがよいと思う。
それは、社長としての立ち位置が確固としていて、精神のありように曇りがないからだ。
②ビジネスモデルとしては、衣料品の単なるレンタルモデルと思われている節がある。
その判断は、本人も主張している通りで、正しくない。講演を聞く限りでは、消費者に対する提案型のモデルである。
③別の言葉でいえば、ファッションに対する「テイストのチューニングモデル」とわたしは見た。
以上、この会社は、ファッションレンタル業界に、まったく新しい地平を開く可能性がある。