【学生感想文】井出 留美 著 『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか 』 幻冬舎新書

 学生読書感想文優秀作品 3名の感想文を掲載する。


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「賞味期限のウソ」を読んで 川口 寛貴

 まず本書を読んだタイミングが私にとってベストなタイミングであったということを伝えておきたい。なぜなら私と私の母は賞味期限の切れた食品の扱いについて異なる意見を持っており、最近何度もモメていたからである。賞味期限が切れたらすぐに食品を捨てたい派である母と、賞味期限を多少過ぎても健康には問題がないので食べてかまわない派である私の対立である。そのような状況の中で本書を読む機会があったので、母親を説得するために、私の主張の根拠となる情報を探そうと考えながら本書を読み進めていった。
 
 本書は我々にとって身近な「賞味期限」を切り口にして、「食品ロス」という社会的課題に注目することの重要性を説き、その課題についての解決策を提案してくれる内容になっている。メインの論点は「賞味期限」の設定が正しいか正しくないかという点ではなく、
「食品ロス」はなぜ生まれるのかという点である。具体的に言えば、3分の1ルールによる小売店の納品拒否など商慣習に起因する事業者由来の食品ロスと、賞味期限などが迫った食品をゴミ箱に捨てるなど消費者由来の食品ロスがある。それぞれの発生原因や、現在各所で行なわれている「食品ロス」を減らすための様々な取り組みを紹介するとともに、我々消費者にこの社会的課題について考えを改めるよう促している。
 フードバンクの活動など、事業者由来の「食品ロス」を減らす取り組みの部分を読んだ時、ある日本企業のサービスと世界の飲食店の取り組みの例を思い出したので紹介したい。
まずは「食品ロス」削減が期待できる飲食品向けサービスから紹介する。アジアインタートレード株式会社が運営するサービスでは、形が悪いなどの理由で廃棄されてしまう規格外の有機野菜を買い付け、消費者へ3割程度安く販売している。「食品ロス」問題の大きな原因にもなっている規格外野菜の廃棄の課題を解決しつつ、生産者と消費者を上手に繋げてWin-Winの関係に導いているサービスだと言える。現在は、生産者からある程度の量をまとめて調達しているため、5品目5kg程度の販売からのみ受け付けている。
 次に独自のアイデアで「食品ロス」対策に取り組む飲食店を紹介する。近年スーパーなどで廃棄される食材を仕入れ、料理に使用する飲食店が世界のあらゆるところで誕生している。ある英国のレストランは廃棄される食材を使用したメニューを毎日提供しており、材料費がかかっていないため料金が設定されておらず、客が好きな料金を払うシステムになっている。
 これらの二つの具体例を思い出し、廃棄食材の活用法について1つアイデアが浮かんだ。大学の食堂に、廃棄される食材を使用したメニューを取り入れるという案である。衛生面・安全面などの観点から実現するのは難しいかもしれないが、実現できれば「食材ロス」は減り、大学の食堂側も仕入れコストを抑えることができる。社会的課題に取り組むことで大学のイメージもよくなる。そして何より学食に激安メニューが登場すれば学生は大喜びである。このようなアイデアは今まで何度も出てきていそうだが、検索してもそういった取り組みを行っている大学は見つからない。実現を不可能にする障壁があるとしたら、どのようなものが挙げられるか、小川先生にお聞きしたい。

 本書を読み終えて、社会的課題を解決するには消費者一人一人の意識・行動がいかに重要かを改めて感じた。賞味期限が過ぎていても、食べられるかどうか自分で判断することもその内の1つである。これは以前課題本として読んだ『これ、食べていいの?』で述べられていた、「食による1票を投じ、社会的課題の解決に消費者が参加することが重要だ」という内容と重なる。「食品ロス」が生まれてしまうのは致し方ない部分もあると思う。しかし、しょうがないと諦めてしまう前に、今一度、何かできることはないか考えることこそが「食品ロス」の削減に繋がるのだと思う。本書をきっかけに人々の「食品ロス」に対する意識・行動に変化が生じ、この社会的課題の解決が進むことを願いたい。
 そして最後に、母に本書を読んでもらい、私の主張に納得してもらうことができた。今では私に確認せずに食品(特に納豆)が捨てられることがなくなったことを報告して終わりたいと思う。

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「賞味期限のウソ」を読んで 小川 理紗

 私は今まで多くの食品において、賞味期限を1日でも過ぎると捨ててしまう人間であった。
しかし、本書を読んで考え方が変わった。特に卵についてはかなり驚かされた。納豆やチーズといった発酵食品に関しては、賞味期限が少し過ぎていても大丈夫だろう、と何となく感じていたが、卵に関しては全くそのような感覚はなかった。食べたくもないのに朝から卵2つ分の目玉焼きを作って賞味期限を守っていたくらいであった。私は決まりに囚われ過ぎていたと思う。

 現在の私のアルバイト先であるカフェでは、飲むヨーグルト、豆乳をドリンクの材料として使用しているのだが、それらに記載されている賞味期限の通りに使用していると、一本使い切る前に腐ってしまうことがしばしばあった。もちろん製品のメーカーは未開封の状態での賞味期限を記載しているはずであるから、開封後はその期限よりも早く消費しなければいけないのであろうが、それら、特に豆乳はあまりにも早く腐るのでロスがとても多くなってしまった。ロスになるのであればまだしも、従業員が腐っていることに気付かずに、その豆乳を使ってドリンクを調理してしまい、お客様の口に入ってしまったら大問題である。

 そこで私たちは、開封後のオリジナルの賞味期限を設定することにした。すると、腐ったドリンクの提供をすることはなくなったが、設定した期限を過ぎたものは廃棄するように徹底したので、ロスの量が以前よりも増えてしまった。さすがにそれではコストがかかりすぎるということで、ポーションを小さくすることにした。今まで1リットルパックのものを使用していたが、200ミリリットルのものに変更した。豆乳に関しては、未開封であれば120日の賞味期限が設定されているので、ロスはほぼなくなった。
 また、水分量が多く、常温や冷凍保存では傷んでしまいそうなジャムのようなものや、野菜のペーストなどは冷凍保存するようにした。
 このように、ある程度融通のきく大手チェーンでない飲食店であれば、店舗の人間が様々な工夫をすることによってロスを減らすことができるが、マニュアルがきっちり決まっている大手チェーンの飲食店ではそのようなことはなかなか難しいのではないかと思う。
 そのように感じたのは、以前6年間アルバイトをしていたマクドナルドのことを思い出したからである。
マクドナルドでは、衛生管理や調理方法、お客様への対応など全てがマニュアル化されている。あれだけ多くの店舗を抱える大手チェーンであれば、どこの店舗でも変わらないサービス、商品を提供するためにマニュアルというものは必須であるとは思うが、時にそのマニュアルが悪い作用をもたらすこともあるのではないだろうか。

 分かりやすいところでいうと、「ポテトは揚がってから7分の内に売りさばかなければならない。もし7分以上経過してしまった場合は、そのポテトを廃棄しなければならない。」というルールがある。味や品質を維持するために規定されたものであろうが、そのルールを忠実に厳守していると、ロスが異常に発生してしまうのである。

 マクドナルドのマニュアルには、その7分ルール以外にも、ファーストフードとしていち早くお客様に商品を提供するという決まりがある。7分ルールとファーストルールを両方守るためには、アイドルタイムであっても常に揚げたてのポテトを用意しておく必要がある。お客様にポテトを頼まれたらいつでもすぐに美味しいポテトを提供できるようにストックを作っておく、ということはお客様目線では大変嬉しいことであるが、店舗側としてはロスが増えてしまう原因となってしまうのである。
 この現象は、ポテトに限らずパティやチーズでも同じように起こっている。マクドナルドでは、ロスの量を毎日計量しているが、私が初めてロスの計量をした時はかなり大量で驚いた記憶がある。
 このロスを減らすために多くのマクドナルド店員は、こっそりタイマーを延長している。もはやこの行為は多くの人が行い過ぎていて、無意識に14分経過させているクルーもいると思うほどである。14分経過したポテトは塩を吸ってシナシナになってマクドナルド自慢のゴールデンブラウンのポテトとは程遠いものとなってしまっている。確実にロスは減るけれど賞味期限の過ぎた最高に美味しい状態ではないポテトを提供することになってしまうのである。
 様々な規定がある大手チェーン店で、ロスを減らし、且つお客様も満足させるということは両立が不可能なのだと思う。

 これから日本の飲食店が考えるべきことは、お客様の満足だけでなく自らの負担になるロスを減らすこと、また両方を100%達成することが難しいのであれば、何らかの妥協点を見つけること、日々起こる変化や気付きに柔軟に対応していくことであるのではないだろうか。

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「賞味期限のウソ」を読んで気付いたこと 清原 千陽

 この本を読んで特に印象に残った3点について、意見を述べて行きたいと思います

①コンビニやスーパーでいつでも賞味期限が遠くてきれいな食品が、全く欠品すること無く並んでいることは異常だということ

 まずはこの事実についてです。私は筆者の指摘通り、恥ずかしながらこれが当たり前だと思い何も疑問を持たずに生活してきました。
 賞味期限が切れた商品を置いているなんてもってのほかですし、品切れしているなんてありえない、生鮮食品でも傷んでいそうなものが置いてある時は「このスーパーは管理がきちんと行き届いていないな」と思ってしまっていました。
 売り出し中のお買い得商品などは特に、品切れしているととてももやもやした経験があります。しかし思い返してみると、このように品切れを起こしているスーパーやコンビニをあまり見たことがないということにも気づきました。メーカーの発注の不行届きによって商品棚に欠品を起こしてしまうと店舗ごとに罰金を払わなくてはなりません。そのために、メーカーは多額のコストをかけて頻繁に店に商品を補充しに行く。このようなシステムで商品欠品を防いでいるということに驚きました。
 何よりも、小売業者の立場がここまで強いとは思っていませんでした。確かに欠品すると店側にとっては機会損失となってしまいますが、一瞬も欠品を許さずにいつも棚に商品がぎゅうぎゅうになるようにしておく必要はないのではないかと思いました。
 また、罰金という制度にも疑問を持ちました。小売業者というのは取引先に罰金を課すほど偉そうな立場なのかと驚きました。そのようなおかしなシステムに対してメーカーが強く言えないという状況も問題だと思いました。

②デパ地下パン屋は毎日大量にパンを捨てていること

 華やかで美味しいパンが揃っているデパ地下のパン屋。しかしその裏では大量の売れ残りパンがゴミとなっていました。
 デパ地下パンが大量に廃棄を出す大きな理由は、百貨店からの指示です。ここでも小売とメーカーの関係性の弊害が生じていると思いました。
 百貨店は、閉店間際まで美味しいパンをお客様に提供したい。そのため閉店近くになっても棚にはぎっしりと商品を並べておかなくてはならないのです。
 商店街やスーパーに入っているパン屋は閉店間際になると品数が減り、値引きをしているお店もあるのに百貨店のパン屋はすごいなあ、とのんきに見ていましたがその裏には大量の廃棄と百貨店の見栄があるということに気付かされました。

③食べ方のマナーは習うのに、「買い方」のマナーは習わない

 誰でも子供のころに箸の持ち方や簡単なテーブルマナーなど、食べ方のマナーを習います。しかし買い物をする時のマナーは教わった記憶がありません。
筆者は
・野菜や果物をやたらと手で触り、きれいに積んであるのを崩して放置する
・何でもかんでも棚の奥に手を伸ばして日付の新しいものを選んでとる
・一度カゴに入れたものを違う売り場に放置していく
などをマナー違反として挙げています。
 私は恥ずかしながら、2つめの賞味期限が遠いものを選んで買う、ということをしていました。これは幼いころに祖母から習ったことで、「棚の一番前にある商品はみんなが手に取るから汚いし、賞味期限も近い。だから奥の方から取ってくるんだよ。」と言われ、なんの疑問も持たずに習慣としてやってきました。友人と買い物をしている時に前から商品を取っているのを見ると「なぜ奥から取らないのだろう?」と不思議に思うこともあったくらいです。
しかし確かに、私が選ばなかった前の方の商品は誰が買うのでしょうか。皆が私と同じ買い方をしたとしたら、沢山の廃棄が出てしまいます。

 筆者がこの一冊の本を通して一番伝えたかったことは、「賞味期限が近づいている食べ物を買う習慣をつけよう。」この一点です。皆がこれを守るだけで沢山の商品が救われます。
 この本を読むことで、賞味期限に神経質になる必要性はあまりないということが分かりました。賞味期限が切れても大半の食品は食べられるし、そもそも切らしてしまうようならサイズを小さくしたり、食べ方を変える。このような小さな工夫で日本の食品ロスは改善されていくのだということを学びました。