2日前(1月25日)に、群馬県新町にある「ガトーフェスタ ハラダ」(ラスクで有名)の本社を訪問した。『日経MJヒット塾』のセミナー打ち合わせのためである。本番は2月19日。地方工場を視察した後に、現地でセミナーを開く場合は、事前に打ち合わせをしている。
一昨日も、専務の原田節子さんが、わたしたちに対応をしてくださった。原田さんは、立教大学経済学部を1979年に卒業して、家業の菓子店(松雪堂)を継承した。いまや群馬県を代表する女性経営者である。
創業1901年の老舗和菓子屋を、先代の社長(父親)が、1952年に「有限会社原田本店」に社名を変更。和菓子から給食用のパン供給などに事業分野を拡張していたからである。当時の従業員数は15名程度(会社のHPによる)。
2000年に原田専務の創案で、その後に大ヒット商品となる「ガトーラスク グーテ・デ・ロワ」を発売。これを機に洋菓子部門を、「ガトーフェスタ ハラダ」として展開を始めた。当初は、地元群馬のお土産として通信販売でラスク事業を立ち上げた。この辺の経緯は、2月19日のセミナーで原田専務よりレクチャーを受けることになっている。
2003年に、地元の群馬のすずらん百貨店に出店(高崎と前橋)。2004年以降は、千葉県の船橋東武を皮切りに、全国の有名百貨店20店舗に出店することになった。2014年時点で年商は約170億円。群馬県に2工場(高崎と新町)、従業員数約1000人の優良企業に成長した。
わたしが最初に「ガトーラスク」を知ることになったのは、2009年の”2月”である。なぜ覚えているかといえば、そのときにいただいたお土産が、「GFHのロイヤルセレクション」だったからである。ガトーフェスタの”ラスク”がわたしの記憶に刻まれているのには理由がある。
2月のその日(バレンタインの前)、カインズホームの神田社長室長(当時)が、フィールドワークの打ち合わせのために、高崎(当時本社)から上京してくださった。研究室へお土産がラスクだったのである。そのラスクには、ホワイトチョコのコーティングが施されていた。
いまでも記憶に残っている神田さんの言葉は、「この商品は、この時期(冬場)にしか入手できないんです」という説明だった。ホワイトチョコでラスクをコーティングしてあるので、気温が高い夏場はチョコが溶けてしまう。バレンタインやホワイトデー(2月14日、3月14日)の時期にしか製造しない。地元のお土産を訪問先で渡すときに、こうした一言は決定的だ。記憶に残るのエピソードだった。
ついでに言えば、そのころから、個人的にGFHのラスクが気になり始めた。とくに冬場、お歳暮のシーズンからクリスマスにかけて、百貨店の1Fのショップやデパ地下を通ると、長蛇の列ができていることに気がついた。「ガトーフェスタ ハラダ」のショップの前にである。新製品の発売で、女性たちが並んでいるのが目につくようになった。
さて、いつものように前置きが長くなった。ラスクのヒットは、どのように生まれたのだろうか?ヒット商品の誕生の話は、しかし、別の機会に譲ることにしたい(2月19日)。
本日のブログで書きたかったことは、原田節子専務のような女性経営者を生み出した、上州(群馬)という土地柄のことである。
昨年度のヒット塾は、訪問企業が「相模屋食料」(前橋市)だった。現社長は、娘婿の鳥越淳司さんである。しかし、相模屋の実質的な創業者は、女性経営者である。戦後の昭和26年(1951年)、戦争で夫を失った江原ひさ(初代)が生きんがために始めたのが、豆腐店だった。3代にわたる成長物語の起点には、群馬女性の踏ん張りがあった。
原田節子専務もその一人である。バブルが崩壊して、和菓子とパン製造の事業が思わしくなくなった。一念発起して創案したのがラスクだったのである。
群馬の女性は、働き者である。世界遺産に登録された「富岡蚕糸工場」では、女性が中心になって働いていた。お蚕さんを世話するのは、女性の仕事である。絹の糸を紡いだのも女性である。群馬(上州)には、女性が活躍する産業的な基礎があったのである。
群馬の男性たちは、お蚕さんに食べさせる桑を植えたり、畑で木を掘り起こしたりはしたのだろう。しかし、圧倒的な女性たちの働きに比べると、いまでも目立った存在ではない。群馬在住のある男性に、原田節子専務(女子力)と空っ風(男勝り)の関係の話をしたら、即時にメールで返事が返った来た。
「先生の見立てどおりですね。かかあ天下の群馬です。男も頑張っているつもりですが、地味ですね。失礼します」
その逆の証拠もある。群馬男子に関する神奈川女子からのコメントである。
「大学の同級生の群馬男児は気弱でなよっとしてます、、、話をきいてると、姉と母が強そうです。あてはまります!」
群馬県は、47都道府県で「県のブランド力」が最下位である。あまり議論されることはないが、群馬県の観光資源を列挙してみると、湯畑のある草津温泉、嬬恋村の高原キャベツ。しかし、どちらの場所でもやはり(笑)、温泉宿の女将さんやキャベツ農家のおばさんが、下働きの男性を圧倒して指示している感じがする。
やはり、群馬女性の女子力レベルが高いのだろう。群馬は、女性経営者が育つ土壌があるのだった。そして、上州のわき役男子はといえば、代表選手が、木枯し紋次郎と国定忠治である。上州男子の命運は、原田さんや江原さんを見ていると、なんだかわかるような気がする。
群馬の男性陣へ、反論を期待します!