鳥越さん、”ナチュラルとうふ”で米国市場に殴り込みをかけましょう。

 相模屋食料の鳥越淳司社長が、つい先ほどまで研究室にいらしていた。法政大学チーム(電通吉田財団の助成研究グループ)が「ザクとうふ」を事例分析したからだ。朝日大学の中畑先生とのフォローアップ取材は30分ほどで切り上げて、相模屋さんの最近のビジネスの話になった。



 鳥越さんが、会社案内のパンフレットを取り出して見せてくれたのが、「ナチュラルとうふ」だった。
 コンセプトは、女の子のためのおとうふ。マスカルポーネのようなおしゃれなとうふ。大豆100%の濃厚なクリーム感である(パンフレットの記述から)。
 「豆腐」(漢字)のイメージが変わってしまいそうだ。そう、「おとうふ」(ひらがな)が、おいしそうなのだ。ナチュラルとうふは、ケーキ感覚で楽しめるスイーツの一種に見える。
 製品ラインは4つ。リッチなコクの「プレーン」(フレッシュチーズのような味わい)と、とろける濃厚感の「チョコレート味」(ムースのようにとろける食感)。そして、ハロウィン限定の「かぼちゃ風味」(プリンのようなくちどけ)。
 ショルダーコピーが上手だから、女性たちがつい手に取ってみたくなる。極めつけは、「Premium はちみつ×プレーン」。このラインは、カップに入ったおとうふに、はちみつ(アルゼンチン産)をかけて食べる方式。カップは、スタバのプラスティックカップを想像してほしい。特製のスプーンは、ザクのときの発想からだろう。カップは片手で持つことができる。
 
 このパンフレットを見たわたしは、鳥越さんにある提案をしてみた。
 相模屋はすでに、「菊乃井」監修のおとうふを開発している。英国向けに発売しているが、ボリュームをねらうのならば、米国市場のほうが有望ではないか。米国市場の開拓は、キッコーマンの茂木友三郎名誉会長の貢献例もある。その根拠を、わたしが米国アトランタのモールで観察してきた。米国人消費者は、食に関して大きく変貌を遂げている。
 その説明のために、『AFCフォーラム』(2016年1月号)に昨日書いたばかりのコラムを編集して引用する。タイトルは、「米国でも、食はファストからスローに」である。

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  今月の初旬、南米視察ツアーの帰途、トランジットで米国ジョージア州アトランタのホテルに宿泊した。空港到着後に、レノックス・スクウエアを視察することになった。わたしが興味を持ったのは、フードコートだった。というのは、今年2月に『マクドナルド、失敗の本質』を刊行したばかりで、米国マクドナルドの様子が気になっていたからである。ところが、案内板にゴールデンアーチを探し出すことができなかった。さらに驚いたことには、競合のバーガーキングやタコベルなどの低価格ファストフード店も入店していない。
 日曜日の昼過ぎである。フードコートのカウンターにはたくさんの人が並んでいた。メキシカン料理のチポトレ、ベーカリーのパネラ・ブレッド、チキンサンドのチックフィレイなど。どの店も、食材のナチュラルさやヘルシーさを訴求している。また、注文を取ってから商品を手渡すのでなく、顧客に具材を選んでもらうサブウエイ方式を採用していた。カウンター前には長蛇の列ができているが、静かに並んで自分の番が来るのを待っている。
 ファストフード発祥の地で、食がスローに変わっていく風景を見ることになった。ファストフード店が、チポトレのようなスローなカジュアルレストランに駆逐されている。米国でも、低価格や利便性だけを重視するのではなく、食べ物が本来的に持っている価値(おいしさと栄養価)を大切にする考え方が復活している。食事に時間をかける生活スタイルが定着し始めている。

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 米国人消費者は、ジャンキーな食事に飽きてきている。
 美容や肥満など健康上の理由が大きいのだが、それだけではない。米国ウインがクールだと思うライフスタイルが変化しているからだ。このコラムでは書かなかったが、米国人が好むパンやケーキやアイスクリームのサイズが小さくなっていた。また、小さなサイズの”kawaii”パンケーキを販売しているチェーンに人がたくさん入っていた。例えば、パンケーキとアイスクリームの「オプリンクルズ」(Oprinkles)。
 アメリカのトレンドを理解していただけるなら、鳥越さんに対するわが提案をなんとなく想像していただけるだろう。「ナチュラルとうふを引っさげて、米国のスイーツ市場に殴り込みをかけてみたら」である。ヘルシーな食品とおしゃれな容器。Tofuの素敵な食べ方の提案。
 そして、米国大陸上陸の最終段階は、ナチュラルとうふをてこに、オーガニック&ナチュラル系のスーパーを攻めること。コストコやトレーダージョーズなどでは、相模屋のとうふが大ブレークしそうだ。
 鳥越社長! わたしをマーケティングアドバイザーに雇ってください! 

*参考(ウイキペディア)
 「マスカルポーネ 」(Mascarpone) は、イタリア原産のクリーム・チーズである。マスカポーネ (Mascapone)、マスケルポーネ (Mascherpone)とも言う。
 フレッシュチーズで、元はロンバルディア州の冬期の特産であったが、現在はイタリア全土で生産されている。乳脂肪分が80%前後で天然の甘味があり、固めに泡立てた生クリームに似る。また、酸味や塩分が少ないことからリゾットその他の料理や菓子によく使われるほか、ゴルゴンゾーラなど塩分の高いブルーチーズを食べる際に混ぜ合わせることも多い。そのような特徴から、味の薄いクラッカーやパンに単体で添えて食べる用途には向かないが、スモークサーモンや生ハムなどと組み合わせることでおいしく食べることができる。イタリアではフルーツを添え、シナモンをかけて食べる。燻製にすることもある。
 日本ではティラミスの材料として一躍有名になった。
 高級なものはパルミジャーノ・レッジャーノやグラナ・パダーノといったチーズの製造過程で出た乳脂肪を使用する。