「生け花甲子園で、故郷・秋田の女子チームが優勝」『JFMAニュース』(2014年11月号)から

 先月号の「JFMAニュース」に掲載した記事を転載する。わたしにとって、うれしい知らせだったからだ。故郷の秋田の女子高が「生け花甲子園」(草月主催)で優勝したのだ。このごろ、生け花や盆栽を見直す機運を感じている。レトロマーケティング?



「生け花甲子園で、故郷・秋田の女子チームが優勝」
『JFMAニュース』2014年11月18日
  JFMA会長 小川孔輔
 

 二重の意味でうれしいニュースが飛び込んできた。お花関係の話に、生まれ故郷の秋田が絡んでいたからだ。
 昨日(11月17日)、YAHOO!ニュースを携帯で見ていたら、「生け花甲子園、最優秀は秋田・横手城南高「花の雲」」という見出しを発見した。さっそく京都で開催された「生け花甲子園」の様子を知るために、共同通信の記事(11月16日夕方の配信)にアクセスしてみたら、さらにうれしいことが見つかった。この大会に参加しているチームが過去最多(118校)なのだそうだ。女子高が減っていることもあり、もしかして高校から生け花クラブが消えてしまったものとばかり思っていた。その「華道部」が復活しているではないか。
 記事によると、「全国9地区の予選を勝ち抜いた10都道府県の10校が出場。決勝に進んだ3校は地元の草花も使い、メンバー3人で代わる代わる花ばさみを握るリレー形式で作品を完成させた」となっている。全国大会の正式名称は、「Ikenobo 花の甲子園 2014」というらしい。
 最優秀賞の栄冠に輝いたのは、わたしの地元(秋田県)の横手城南高華道部チーム(3人一組)で、テーマは「向上の意気」。「若々しく伸びようとする自分たちを赤い柳や白い菊、オレンジのバラで表現した」と池坊のお師匠さんがコメントをつけていた。優秀賞は、京都府のノートルダム女学院高と佐賀県の唐津南高。名前からすると、優秀賞の二校もやはり女子高だろうか?
 高校生の大会だから、静かに花を飾るのだと思っていたら、さに非ず。審査員の評価では、花の形だけでなくパフォーマンスや発想力も含め総合的に審査するとのこと。これって、「花活けバトル」にしてしまったら、もっと盛り上がるのでは?と考えた次第である。

 日本古来の伝統芸術である「生け花」や「盆栽」が、世の中から消えてしまいそうになっている。先日の「JFMAアフタヌーンセミナー」(11月11日@法政大学)では、「大宮盆栽美術館」の井上さんが講演をしてくださった。そのむかし、市ヶ谷の駅前にシュレッダー会社の「明光商会」が運営している「盆栽美術館」があった。
 大野春子(現、マクロミル社員)という女子学生の母親(社名は「大野盆栽」)が、この美術館のミニ盆栽のショップを任されていた。大宮盆栽美術館が所蔵している盆栽には、もしかすると明光商会が寄贈した作品がたくさん含まれているのではないだろうか?井上さんと一緒に来た、盆栽作家さんには、つい聞きそびれてしまった。
 生け花も盆栽も、日本人が創始した芸術である。古美術品的な側面もあるが、ある種のパフォーマンス・アートでもある。そして、作品そのものが独特である。名前からして「生け花」や「盆栽」は、生きているものをそのままに作品として見せるところに特徴がある。高額な盆栽などは、完成までに数百年からかかるらしい。「山取りしてから400年くらい、値段は250万円くらいですかな」など平気で言う。日光や水やり、育て方によって形が日々変わっていく。
 盆栽は不思議な芸術作品だ。ある意味では、「町」と同じなのだ。人々がその中で生活をしながら町も形を変えていく。日本人が発明した生け花と盆栽は、ふたつとも変化することが共通している点だ。不定形な世界が、とどまることなくさらに発展していく系統だ。