日本マーケティングサイエンス学会で、研究発表を予定している(12月3日@電通)。飲料とトイレタリーカテゴリーの107ブランドで、震災後の無広告状態が、広告想起率と商品の実売にどのように影響したかを、短期(2~4週)と中期(6~12週)で測定した結果である。
詳細は、学会発表の時に説明するが、つぎような結果が得られている。なかなか興味深い結果である。
というのは、米国ではタバコ(マルボロ)について、日本では味の素のブランド(調味料、加工食品)について、無広告の状態が一定期間経過すると、売り上げが落ちてしまうこと(回復に時間がかかること)が知られているからである。
その期間は「比較的長い(3~6カ月)」と言われている(筆者のヒアリングによる)。ただし、無広告の期間と、そのインパクトの大きさは、製品カテゴリーでちがいが見られる。
(1)購買サイクルが短い加工食品(レトルト)などは、短期・中期のどちらも販売に大きな影響があるが、購買サイクルが長い調味料などは、無広告の影響が比較的小さい。また、
(2)広告ストックが大きいブランドでは、無広告状態が多少続いても、広告想起や実際の販売への影響は軽微になる。
この仮説(経験則)を、今回は、飲料カテゴリー(購買間隔が短い)と、トイレタリー(購買間隔が長い)の107ブランドで検証してみた。
震災時の状況が、2週間から6週間(広告をすぐに復活したブランドが相対的には少数だった)、無広告状態を作ったことになる。期せずして、社会的な「自然実験」が実現できた。その結果をフォローアップしてみようという研究内容である。
その結果は、
(1)TV広告を早期に復活したブランドでは、広告想起が、どちらのカテゴリーでも5~9%ほど高くなった。しかし、
(2)商品の販売となると、飲料では格差が出たが、トイレタリー(シャンプー)では、広告によるちがい(停止と復活)によるちがいがほとんど現れなかった。また、
(3)広告ストックが大きなブランドでは、広告想起率の低下の度合が小さかった。
以上が、簡単なサマリーである。
これまでの実業界の経験則(仮説)を支持する結果となった。その理由と分析の詳細については、週明けに紹介することにしたい。この分野では、非常に重要な発見になる。実験としては、世界的にも通用する知見だとわたしは思っている。