旧知の齋藤隆さんから、久しぶりに実におもしろい本をいただいた。早速、今月の学生たちの課題図書に指定した。齋藤さんが発明した「食MAP」で、天ぷらにソースかける日本人家庭が、中国四国地方を中心に10%程度いることが判明している。
天ぷらにソースをかけるなんて?そんな食習慣あることすら、東北人のわたしは知らなかった。しかしである。東北人のなんと、0.2%の家庭で、ほんのごくわずかであるが、天ぷらにソースをかけている家庭があった!
こんな事実を、本書から発見することができる。実に、食生活に関する常識が覆される「目から鱗が落ちる」書籍である。サブタイトルに、「だれも知らない食卓の真実」とある。わたしは、「食卓の天動説派」だったようだ。
学生がいま、本書の感想文を書いているので、あまり内容には触れないことにする。面白いので、実際に読んでみて欲しい。
齋藤さんは、「㈱ライフスケープマーケティング」の取締役会長である。
日本の食卓で食べられている料理(の種類)とその食材を日記式に調べる「食MAP」を開発したご本人である。世界でもまれな「家庭での料理メニューデータ」を長期間(10年以上)にわたって食品メーカーを中心に供給している。
齋藤さんからいただいたお手紙が、今回の本の特徴を良く表わしているので、そのまま引用する。この文章は、まえがきと本の帯でも引用されている。
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拝啓 日ごろからお世話になっている皆様へ
夏の暑さがやっと去りましたが、お元気でお過ごしでしょうか・・・。
このたび「天ぷらにソースをかける日本人」という小本を出版しました。
是非お暇な折にお目通しいただきたく同封いたしました。
本書を書きながらつくづく思ったことは次の一言です。
「食卓は文化の孤島である」
よく考えてみれば当たり前のことです。この当たり前のことを、私達はこれまでずっと見逃してきたようです。その証拠が次の事実です。
「隣の食卓が分からない」「世間の食卓との交流がない」
私達の食卓はまるで大海に浮かぶ小さな島です。小さな島でも、島同士がお互いに行き来し交流すれば良いのですが、全くといってよいほど交流がないのが、食卓という孤島です。
食文化から見ると、これが幸いしたようです。交流のない孤島の文化は温存される部分が多いことが分かりました。もちろんマスコミや企業広告の影響はあります。しかし日常生活の行動は、潜在的であるがゆえに保守的です。例えば、本書で取り上げた雑煮やおでん、天ぷらなど、夫婦の故郷の味が大都会にも息づいていることが分かりました。
食卓の孤島は、今、危機に瀕しています。島々の交流がなく、時代を生き抜いていく術が分からない状態になっています。このままではガラパゴス島のように世界から取り残されてしまいます。一部の商業主義的文化は別として、私達の食の文化が、本当に消えてしまうかも分かりません。
ところで、新しい文化を創ったり、復活させることは新しいし市場を想像するのと同じです。これからの食品市場は、食卓文化を活発化させることが鍵を握っています。そのためには温故知新のコンセプトが大切です。新しい次元のマーケティングが始まろうとしています。
弊社は新しい次元のマーケティングに向けて第一歩を踏み出しました。
2010年9月 吉日
株式会社 ライフスケープマーケティング
齋藤 隆