ローソン・フレッシュ・ピックアップ(LFP)がサービス停止に

 2018年にサービスが開始されたLFP(ローソン・フレッシュピック)が、今月末をもってサービスを停止する。発表は一週間前のことだった。サービス開始直後に、ローソンさんに改善提案を出したこともあった。かみさんが旅行でいなくなったときなど、便利なので千駄ヶ谷の店を利用していた。商品は結構おいしかった。サービス中止はとても残念だ。

 

 ローソンの商品だけでなく、他メーカーの商品も品揃えされていて、ランナップも豊富だった。成城石井のPB商品やロック・フィールドのサラダ総菜など、クオリティと価格のバランスも悪くはなかった。カバーする店が首都圏の3000店舗まで増えていけば、この事業モデルはいずれはスケールすると思っていた。

 個人的な事情を言えば、自宅の近くにFLPを利用できるローソンの店舗がなく、東日本橋や千駄ヶ谷の店舗を利用していた。江東区を超えて葛飾区まで広がれば、わたしの利用頻度はもっと増加しただろう。

 その前にサービスが停止になったわけだが、利用者としては何の不満もなかった。しいて言えば、サービスを継続発展させるために、自分の来店頻度が低かったことが反省材料だった。新しいサービスには、ヘビーで熱狂的なファンが必要のようだ。そうしたユーザー像が発表できなかったのだろう。

 

 ローソンがFLPのサービスを継続できないのは、事業としての収益性に問題があったからだった。

 以下は、担当者にインタビューしたわけではないので、あくまでも個人的な推論になる。推測はまちがっているかもしれない。

 一番の問題点は、利用者が思っていたほど伸びなかったことだろう。梅澤先生が「強いニーズ」と呼んでいる、他では代替不可能なベネフィットが根本的に足りなかった。絶対的にそのサービスを必要とするコアユーザーの「塊」を発見することができなかったのだろう。

 ソフトはかなり優れものなので、スマホで商品をオーダーするまではたやすい。ユーザーフレンドリーで利用に特別なスキルが必要なわけではない。商品の入力までは簡単である。ただし、その日の夕方までに店舗に出向かなければならない。これが案外と面倒で、スマホで注文するときに一瞬躊躇させる隠れたボトルネックになる。

 コンビの利用動機は、ついで買いや衝動購買である。つまり非計画購買に向いている小売業態なのである。ところが、FLPは予約による計画購買を前提としている。ここがコンビニの利用動機と合致しない点である。

 

 ここからは想像なのだが、店舗でピックアップしない客が現れると、その商品は廃棄ロスになってしまう。なぜなら、支払いは店舗のレジになっているからである。結果として、廃棄費用は本部が負担することになるのだろうから、これが収益の足を引っ張る。

 カード決済もできるわけだから、事前支払いに変更すればロスが削減できただろう。しかし、そうなると発注が抑制されることになる。これはジレンマである。

 本部としては、加盟店の収入が増えると考えて、店舗決済を選択したのだろう。消費者の来店で「ついで買い」が増えるうえに、物流費もかからない。ネットスーパーの代替機能として、店舗ピックアップに期待していたわけである。

  

 ところで、昨年10月に米国カリフォルニアでサラダ専門店を視察してきた。サラダを購入するために来店する米国の若い人のうち、2割近くは事前予約で店舗ピックアップのお客さんだった。米国では、スマホ予約で店舗ピックアップが定着している。それなのに、日本ではセブンでもローソンでも、店舗での商品ピックアップはいまいちである。

 ユニクロは、むしろ例外かもしれない。今回のコロナウイルスの汚染拡大では、店舗に長居したくなかったので、スマホで注文して商品を事前決済しておいて、店舗は商品を持ち帰るだけに利用してみた。おかげで、長時間、密が常態になっている店舗にいることなく助かった。混雑した店の中で、商品を選ぶ時間ももったいない。危険である。

 

 というわけで、個人的なニーズは存在しているとは思うが、ローソンとしてLFP事業は収益化が実現できなかった。

 この先の事業展開で、アパレルのユニクロやニトリに続くことができるだろうか? 事業モデルを変えて、再度挑戦してもらいたい気がする。コロナで店舗に出向けない状態になったことで、サービス停止の時期がさらに早まったことが残念ではある。