オリエンタルランドが、東京ディズニーリゾートの開発構想の発表を延期

 オリエンタルランドから、「開発構想の発表を延期する」というニュースリリースが出された。数年先に向けて5000億円を新パークエリアに投資することはアナウンス済みである。ところが、計画の検討に時間が必要のようで、場合によっては見直しがなされるかもしれない。



 以下は、あくまでも個人的な推測である。急に開発計画の発表を延期するのは(しかも、発表のタイミングも不明)、オリエンタルランド(TDR)にとって、経営環境が変わってしまっている可能性があるのではないか。
 発表延期の背後にある事情を推測してみる。実際には、大きく外しているかもしれない。考えられるのは、以下の3つの要因である。  

1 顧客満足度の低下と客数減
 TDRの顧客満足度が、2年間で9ポイント近く低下したことは、すでに本ブログで述べたとおりである(2015年JCSI調査、エンタテインメント部門で3位に転落)。個人的にも、12月上旬にディズニーランド(舞浜)に行くことがあった。現場観察のためである。最近になってディズニーランドに遊びに行ったゼミ生にも尋ねてみたが、客の数が減っているような気がした。パーク全体が”くすんでいる感じ”がした。 

2 業績悪化によるキャッシュフローの不足 
 2013年から1000億円を超えていた営業キャッシュフロー(営業利益+減価償却)が、2016年には800億円を下回る可能性が出てきている。CS低下と客数減が連動しているとすると、2016年度に営業利益がもっと落ち込むかもしれない。今年はすでに600億円超の設備投資を始めている。この先の差額(キャッシュフローの不足分)を考えると、新テーマパークに5000億円を投資してよいものかどうか。経営陣としては悩むのではないか。

3 舞浜に新しいテーマパークは必要なのだろうか?
 上海、北京、ロシア、その他アジアの新興国にも、新しくディズニーランドが開園する。中期経営計画の中で、オリエンタルランドはインバウンド客を重視しているようだ(同社のIR資料参照)。だが、アジアに続々とパークが新設されると、顧客獲得競争が激しくなる。ここにきて、TDRは、国内パーク2社(USJとハウステンボス)にも追い上げられてきている。

 開園以来、東京ディズニーリゾートは、世界一のホスピタリティを提供してきた。そのことに自信をもっていいと思う。しかし、調査データを見る限りでは、アトラクションの質とサービスで、TDRはもはや絶対的な競争優位性を失いかけている。成長路線を維持し、かつハードに投資し続けることは本当に正しいのだろうか?足元のソフトの大切さを忘れかけているのではないのか。

 
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*昨日(12月22日)発表の「ニュースリリース」から

2015 年12 月22 日

各 位

株式会社オリエンタルランド

東京ディズニーランド®、東京ディズニーシー®今後の開発構想
検討期間延長のお知らせ

株式会社オリエンタルランドは、東京ディズニーランド「ファンタジーランドの再開発」
と東京ディズニーシー「新テーマポートの開発」の2 つの大規模開発構想に関する検討期
間を延長することといたしましたので、お知らせいたします。
当社では、この2 つの大規模開発構想について内容の一部見直しを含めて検討を進めて
まいりましたが、長期持続的なテーマパーク価値の創出に向けては、2015 年中としていた
本構想の検討期間の延長が必要と判断いたしました。
当社では、東京ディズニーランド/東京ディズニーシーに全く新しい価値を創造し、ゲ
ストの皆さまにより素晴らしい体験を提供していくことを目指し、引き続き本構想の検討
を進めてまいります。

※2015 年4 月28 日付の広報リリースにおいて、本構想の検討期間は2015 年中とお知らせし
ておりました
※延長する期間につきましては未定です

以上