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学術研究プロジェクト(「農業と食の持続可能なビジネスモデルとイノベーションの実証的研究」)にご協力いただける研究メンバーを募集します。
 文部科学省の助成研究(基盤研究(B))が採択になった。研究期間は、2018年〜2020年。申請している研究テーマは、「農業と食の持続可能なビジネスモデルとイノベーションの実証的研究」。わたしが、この15年間で取り組んできた「農と食のイノベーション研究」のまとめのリサーチになる。

 

 正式な共同研究者は、ごく親しい3人。マーケティング論と農学の混成チームである。公式の研究分担者は、山根京子先生(岐阜大学 応用生物科学部准教授)、上田隆穂先生(学習院大学経済学部教授)、西尾チヅル先生(筑波大学ビジネスサイエンス系教授)。女性研究者が半分を占めているのは、いかにもわたしらしいかなと思う。

 

 わたしが申請書類に書いた「研究概要」は、いずれ文科省のHPで公開されることになる(このあとに、文書をテキストで貼り付ける)。この研究プロジェクトは、2000年からはじまる科研費研究で、個人的には最後のプロジェクトになる(3年ごとに申請をしてきた)。

 そこで、上記の3人の研究者以外に、最後のプロジェクトに協力していただける研究者を募りたいと思う。商学・マーケティング分野に限定することはしない。テーマ的には、農学や経済学、地理学や情報工学などの広い分野の研究者が学際的に参加できる研究課題である。

 農業と食品マーケティングの境界領域に興味・関心をもつ若いリサーチャーに声をかけてみたい。研究代表者としては、この分野はまだ萌芽的で方向性が見えていないものの、研究者として独り立ちしたいと考えている若手には、将来性のあるリーサーチ分野としてお勧めしたい。

 

 研究会が運営基盤とする組織に、農水省生産局の「NOAF」(オーガニック・エコ農と食のネットワーク)と連動させる。NOAFを支援する会が運営する「アグリフードセミナー」が中心になる。これを起点に、新しく研究会を組織しようと考えている。ぜひ貸「研究概要(申請書)」をお読みいただき、参加協力を考えてみていただきたい。

 

 

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「農業と食の持続可能なビジネスモデルとイノベーションの実証的研究」

(研究代表者:法政大学大学院教授 小川孔輔)

 

(概要)
本研究プロジェクトは、日本の農業とフードビジネスに必要とされる3つの重要な課題(々餾欟チ萠呂慮上、⊃卦就農者・担い手の増加、5蚕儚弯靴稜清箸反品産業への適応)に貢献できるよう、農業分野と食品産業のイノベーションを類型化しつつ、新しい持続可能なビジネスモデルの萌芽を理論的に説明できる枠組みを構築することを主たる研究目的とする。
学際的な研究を推進するにあたり、4つの目標を設定する。’世反の分野でのイノベーションの源泉を明らかにすること、∋続可能なアグリフードビジネスが競争優位性をもたらすことを実証すること、G清箸低生産性の罠から逃れるメカニズムを解明すること、ここ阿稜世反の実証研究の成果を日本のアカデミズムや実務界に紹介すること、の4つである。
理論研究をレビューするとともに、農産加工分野の革新的な取り組みついては、国内外の企業をフィールド調査する。また、アグリフードビジネスを対象とした実証研究では、日本最大の消費者調査=「日本版顧客満足度指数」のCSR データベースを有効活用するものとする。

 

(本文)
(1) 本研究の学術的な背景と4つの課題
本研究は、日本の農業とフードビジネスおよびそれらを統合した事業システムに関するイノベーション研究である。具体的には、以下の4つの課題に取り組むことになる。順番に説明する。

 

  農と食の分野におけるイノベーションの源泉を明らかにする:
 企業経営において一般的に分類されているのは、「プロダクト・イノベーション」(画期的な製品や新市場の創出)と「プロセス・イノベーション」(生産流通システムや業務プロセスの革新)である(網倉・新宅 2011)。戦後日本の農業と食品産業でも、この二つが並行して起こった。これらは、海外からの知識の移転と、日本企業が創発した製品や業務革新に大別できる(林 2003、小川・林 1998)。いま国内外で起こっているのは、食品産業のインプットとなる素材(種子や原材料)と加工技術の開発である(Graca et. al 2015)。過去のイノベーションがどのように起こったのか、新しい革新がどのような背景から生起して産業構造を変えたのかを分析する。

 

  持続可能なアグリフードビジネスが競争優位性をもたらすことを実証する:
 企業の環境投資(Environment)や社会貢献(Social)、ガバナンス(Governance)などは、競争優位に結びつかないと信じられてきた(Kotler 2007)。しかし、日本の農業と食品産業においても、倫理的価値観に基づいた企業組織(持続可能なビジネスモデル)が競争優位性をもたらすことは実証できると考える。すでに海外では、長期的にESGの視点を取り入れた事業が高い収益性を生み出すメカニズムを持っていることが実証されている(Eurosif 2014、小方2016)。具体的な事例として、ESGが収益性と高い相関を示している「持続可能性→競争優位・高収益仮説」を日本のCSRデータベースから明らかにする。

 

  農業が低生産性の罠から逃れるメカニズムを解明する:
 海外と比較したときに、日本の農業は低生産性が指摘されている。農業経済学分野の実証研究(祖田 2000)によれば、日本の農業は、米国と比較して経営規模が150分の一とされている。グローバルに事業を展開する場合は、価格競争が競争優位の軸になるが、農業分野と食品産業がローカルで有機的に結合する場合は、むしろ地域ニーズへの対応と付加価値の創出が競争優位の源泉になる(松尾 2015)。これまで収益性の低い分野(流通・サービス分野)を扱ってきた経験(小川・南 2011)から、小規模の経営でも高い収益性を生み出すメカニズムをモデル化できると考える。EUの研究では、中規模農家の経営では収益性が高いという実証研究が存在している(Premieur 2015)。ヒントは、農業が流通と加工産業に結びつく場合で、一般的には「六次化産業」と呼ばれている形態である。

 

  海外の農と食の実証研究の成果を日本のアカデミズム及び実務に紹介する:
 海外の研究では、サステナビリティの事業概念が新しい食の市場とイノベーションを誘発した事例が多数紹介されている(King et al. 2014)。理論研究とその中心概念を日本の学界と政策担当者に紹介する。実務者に向けては、事業展開に使える資料を収集して提供する。この目的を遂行するために、本研究の主査(小川)が代表幹事を務める「NOAF(オーガニック・エコ農と食のネットワーク)」(事務局:農水省生産局)と連携し、そのプラットフォームを研究活動に活用する。

  

(2) 本研究の特色と学術的な独創性
 本研究では、伝統的な農学とフードシステム論がカバーしてこなかった3つのユニークな領域を開拓することにチャレンジする。3つの挑戦的な分野を、仝Φ翅仂櫃肇灰鵐謄鵐弔凌卦性、⇒論構築と方法論的な独自性、8Φ譱反ナ埓の新しさ、に分けて順番に説明していく。

 

  研究対象と内容の新規性
 本研究では、持続可能な農業とそこから生み出される加工食品、およびその周辺で起こっている革新的な事業展開と社会的な問題を研究対象とする。すなわち、農と食のイノベーション研究の中心領域は、有機農産物とオーガニック食品、遺伝子組み換え作物、植物由来の食品開発などである。海外の実態調査(Forum for the Future 2017)でも、新しく誕生しつつある食品産業とそれを支える新技術が研究対象とされている。実は、欧米で最も伸びている食品の成長分野が、ナチュラル・オーガニック市場である。根底にあるのは、素材開発を含む食品加工技術のイノベーションと消費者意識のドラスチックな変化である。日本ではこの分野のマーケティング流通研究が完全に欠落している。その空白を埋めることも、本研究の狙いのひとつである。

 

  持続可能なフードチェーンモデルの実証
 現代のフードシステムは、「ローカルな生産と消費をつなぐ閉じた自立した経済圏(スマートテロワール)」(松尾 2015)が、グローバルな供給システムを補完する形で、持続可能なエコシステムを形成している。欧米においてもCSAの研究の中で、地域農業とローカルの食品加工メーカーをつなぐフードシステムの誕生を記述した報告書が登場している(Howard 2015)。しかしながら、持続可能なフードシステムの優位性を理論的に説明するモデルは存在していない。わが国においても、食品安全性と消費者の買い物行動についての研究は多いが、農業生産と流通システムを統合した理論モデルの研究は数が少ない。製販統合のモデル(矢作・小川・吉田 1993)と新しい小売の仕組みを手掛かりに、持続可能なフードシステム・モデルの研究に挑戦する。

 

  研究組織編成の新しさ
 本プロジェクトでは、政府機関(農水省)と民間企業を巻き込んで、学際的でユニークな研究組織を編成する。研究の中心は法政大学だが、民間組織を緩やかにネットワークした連携プラットフォーム(NOAF)が側面から研究を支援する。実際の活動においては(A)シンポジウムやセミナーの開催、(B)事例提供の窓口機能、(C)国際的調査研究の受皿の役割を担うことになる。
 

(3) 明らかにすべき具体的なテーマ(3つの分野別)
 3年間の研究を通して、以下の3つを実現したい。詳細については後述する(「準備状況」)。

  基礎理論研究:
 農学とフードビジネス分野における既存研究の整理、海外の実証研究のレビュー(SDG要因と収益性の関係)、持続可能なフードビジネスモデルの理論枠組み作り(主に、初年度に実施)。
  定量調査:JCSIの流通サービス小売業
 (A)CSR指標と生産性の関係(400社10年分のJCSIデータベースを活用)(2年目に実施)
 (B)CSRの実態調査(雑誌『オルタナ』の事例データベースの分析)(3年目に実施)
  持続可能なフードビジネスの事例研究(詳細は、後述)
 国内は、隔月のペースで「NOAFセミナー」を実施、海外は現地調査(3年間を通して)

 

 

| Kosuke Ogawa | 08:28 | - | - | pookmark |

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