良品計画の松井忠三会長は、今月いっぱいで無印を去ることになった。本書は、ご自身の3冊目の著書になる。「仕組み」の本も「社員教育」の本もよく売れているらしい。中身も読みやすいのだが、タイトルのつけ方がまた抜群にうまい!ご本人の創作なのだろうか?
2013年発売の『無印良品は、仕組みが9割』(4月末現在、累計16万部)ほどではないかもしれないが、今回もまた売れそうだ。松井さんの本は、何気ない部分ではっとさせられるところが多い。そのたびに、メモを挟んで入れておく。いくつかを紹介する。
冒頭部分では、まずサラリーマンの4類型が紹介されている(P.18)。
1、生活のために仕事をしている人、
2、少しがんばる人、
3、結果を求めてがんばる人、
4、覚悟を決めてやる人。
どこかで聞いたことがあるタイプ分けだ。数日前に、ブログで紹介した「経営者のしんどさランキング」のサラリーマン・バージョンだ。大変さのランクは、4>3>2>1の順と思いきや。松井さんの言いたいのは、1>2>3>4なのだろう。
つぎは、わたしもよく感じることだが。
「迷ったら遠い道(きびしい道)を選んだ方がよい」(P.54)
これは、次の言葉に続いて書かれている文章だ。
「成果の出ない仕事をすると、「ムダな仕事をした」と思いがちですが、そのムダな仕事がなぜ成果を生まなかったを考えれば、仕事の本質に迫ることができます」(P.53)。わたしも、しつこくあきらめずに仕事をする方なので、なるほど「無駄な仕事をしたと感じたことはほとんどない」。必ず結果を出しているから、そのように感じていたのだと納得させられた。
学生達にも、松井さんと同じことを言ってきた。人生で無駄な経験はどこにもない。神さまは、失敗を経験させてくれているのだよ、と。
つぎの言葉は、あまりこれまで気が付かなかったことだった。
「「任せる」というのは、部下に仕事を割り振ることではなく、部下の仕事を成功させることを言うのです」(P.57)。
換言すれば、これは、「部下の始末」を最終的にはボスがつけてあげるということだろう。たしかに、仕事をアサインするだけでは、その部下の気持ち(安心と成長感覚)を経験させることはできない。
さらには、やり方(プロセス)を指示するのではなく、目的(と期限)を明確に伝えない。
この本には、「ファションセンターしまむら」の藤原元会長(良品計画の社外取締役)が二度登場する。そのひとつが、店舗監査の役割についてだ。通常は、ストアオーディター(監査役)が店長には事前に訪問日時を知らせず、店舗監査を抜き打ちでやるものだ聞いていた。しかし、松井さんが藤原さんから教わったのは、店長にきちんと訪問時間を教えてあげた方が、店舗監査の本来の意味にかなっているとういことだった。
たしかに、監査の目的は、店舗をいい状態に保つことだ。だから、調査のやり方(ランダム)が問題ではなく、結果(良好な状態)がよくなければオーディットは役割を果たしていないことになる。わたしも、このことは誤解していた。
以上、何気ない言葉だが、ふだんのマネジメント経験に照らして、わかりやすい著書だった。この5月からは、松井会長は浅草橋に松井オフィスを開設。たぶん、しまむらの藤原さんのように、元経営者として社外取締役で多くの企業をアドバイスしていかれるのだろう。