毎日が「列車でGO!」(次男、真継の名古屋寮生活)

 久しぶりで次男(真継)が、白井の家に帰ってきた。神戸に住んでいる長男(由)に、自分の車(ホンダのエディックス)を届けるためである。弟から兄に対する「結婚祝い」らしい。いまごろは、東名高速道路を神戸に向かって走っているはずだ。


「自動車の運転は、新幹線を運転するよりは楽だよ」(真継)。自動制御で新幹線は停止するもの、とばかり思っていたから、わたしには、その言葉は意外だった。新幹線は、手動で停止させていたんだ!
 引っ越しが終わった4月2日から、見習い運転手として新幹線の運転訓練がはじまっている。名古屋始発のこだま号で訓練をしているらしい。停車駅が多いからだろう。のぞみ号やひかり号では、練習にならないからなのだろう(笑い)。
 小川家の子供たちがまだ小さかった頃、正月や夏休みに、従兄弟たちが立石(奥村家)の実家に集まった。そのとき、しばしば、近くのゲームセンターへ、親戚一同で遊びに出ていたらしい。私たち大人は、飲んで昼寝をしていた時である。
 ゲームセンターで、真継がマシーンの前に座ると、周囲には人だかりができたそうだ。同年代の従兄弟たち(中島家)から聞いた話である。
 真継は、「列車でGO!」の名手だった。1ミリの誤差で、スクリーン上の列車をホームにぴたりと停止させることができたらしい。中島家のふたり(従兄弟たち)によると、電車が停止した瞬間、周囲の観客からはため息がもれたそうだ。続いて、拍手の嵐が鳴りやまなかったという。

  ところが、実際の運転場面ではそうはいかないらしい。実車の新幹線こだま号では、いまのところ、停止誤差が「10センチの範囲」になかなか収まらないという。一応、停車位置が停止線から前後1メートルの範囲ならば、運行規約上は問題がないことになっている。しかし、制動位置がラインの10センチ以内に収まらないと、生徒は教官から叱責を受ける。
 わたしと同じで、彼は「超」が付く負けず嫌いである。電車でGO!の名手としては、数センチでも外すのが、たまらなく悔しいらしいのだ。コンピュータの制御はかかるそうだが、それでも、次の駅までの距離と列車の速度、飛んでいく外の風景を見ながら、停止までのスピードを頭の中で計算する。
 動体視力がそんなによかったのかな? そんな風に思ってしまう。算数はあまり上出来な子ではなかったが、少年野球ではキャッチャーをやっていた。打者の気持ちの動きを察知する能力は高かった。経験が活きているかもしれない。そのうち、数センチの範囲で制動できるようにはなるだろう。
 
 このまま順調にいけば、9月15日には、運転手の免許が下りてくる。10月23日のわたしの誕生日には、「列車でGO!」をそばで見ていた親戚たち全員を、始発の名古屋駅に招待したいと思っている。
 でも、小さいころから、真継はプレッシャーにはめっぽう弱かったからな。最初のソロ運転で、新幹線を停止線の10センチの範囲に止めることができるだろうか?