前回の記録を確認してみた。「ランニング市場の開発とサービスの変遷」というタイトルで、橋本治郎社長(RBS)にお話をしていただいたのが、2010年の5月だった。まだ5年しか経っていない。その年の『月刊ランナーズ』(8月号)でわたしがインタビューを受けたことがきっかけだった。
ランナーズ仲間では勲章になっている「国盗り」を達成する直前のことである。橋本さんにお会いしたときは、秋田県(田沢湖マラソン)だけを残して、47都道府県のハーフマラソンを完走する予定になっていた。実際に、9月の「田沢湖マラソン」は息子と一緒に完走できたのだが、その後も、7年連続で東京マラソンを走り続けている。
橋本さんの会社「アールビーズ」(+下条編集長の「月刊ランナーズ」)も好調そうだ。しかし、ランニングを取り巻く時代状況は、急速に変化している。
二日前に、雨の中で、多摩川の土手を走った。21Kレースは、若いランナーたちでごったかえしていた。スタッフの対応はホスピタリティ溢れるものだった。大会の運営も上手なされていた。だが、むかし(約10年前)のように、わたしのようなランナーが気持ち良く走れているだろうか?
そうではなさそうだ。河川敷の狭い走路に比して、大会の参加人数が多すぎるのが問題なのだと思う。午前(ハーフ2時間以内)と午後(同3時間以内)の二部制に分けても、この状態である。
そんな思いをしていたら、昨夜のこと、橋本さんからメールが戻って来た。三週間前に、つぎのようなメールを台湾にいるご本人からいただいていたのだ。ありがたいメールだった。
> From: RBS 橋本 治朗
> To: 小川のメールアドレス
> Subject: ご本
> Date: Sun, 8 Mar 2015 22:17:27 +0000
>
> マクドナルドの本新聞書評欄で見つけダウンロードしました。帰りの飛行機で読みます。台湾高雄で25キロ走ってきました。地元の人に台湾進出促され、また頭ひねっているところです。RBS橋本治朗
飛行に乗る前に、拙著『マクドナルド 失敗の本質』を購入してくださったのだ。そして、アジアの国から、日本の大会運営システムが頼りにされていることの知らせだった。
一昨年から、「マーケティング論」の授業(前期、毎週木曜日・午前)では、第4課題が「アジアで新しいビジネスを考えよ!」である。というわけで、5年ぶりに、橋本さんに「授業内講演」をお願いしてしまったのだった。
日時は、7月9日(木)午前11時10分~12時40分である。一般公開も考えている(橋本社長に了解をいただいてから最終決定の予定)。
お願いメールに対して、昨夜、遅くにいただいたのは、「小川先生 おはようございます」ではじまる長文のメールだった。
明日から(つまり本日から)、米国ダラスに出張するとのこと。「ランテス」(大会エントリーシステム)の米国版を運営しているデータサービスの会社を訪問するためである。
橋本さんのメールを要約すると、つぎのようになる。この5年間で、ランニング業界で変わったもの、変わりつつあるもの、そして、変わらなかったものについてである。
(1)変わらないところ:
・日本陸連の市民ランニングの世界への対応
・ローカルの既存マラソン大会(とくに、自治体主導のため新規色が打ち出せてない)
橋本さんは、これを「ローカル大会のシャッターストリート化」と呼んでいます。
(2)変わったところ:
・東京マラソンの一極集中
日本社会の東京集中と地方の落差と同じで、東京マラソンが突出して人気(大阪や神戸がそれに続く)
・ミニイベントの雨後の竹の子現象
公園や河川敷などで開かれる一般公道を使用しないイベント
”荒川マラソン事件”(参加料を集めておいて開催しない)のような問題
(3)変わりつつあるところ:
・ランニング大会の大衆化とその運営
・ランニング大会運営事業の海外展開
・スポーツデータネットワーク(データベース管理)
橋本さんの渡米の理由が、ランテス(RBSの大会エントリーシステム)のアメリカ版を運営している会社(世界一の企業)のダラス本社を見てくることなのだそうです。この会社は、世界8カ国に支店を持っており、ダラスの本社では約1000人が働いているそうです。
そんな話を、7月9日に母校の法政大学でしていただくことに。