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【新潮45】 拙稿「衣食をこんなに捨てていいの?: 商品廃棄の経営学」『新潮45』(2018年6月号)

NEW!『新潮45』(2018年6月号)を掲載する。この原稿が校了になるまでには、およそ10回の書き直しがあった。その後、ご存知のように、伝統ある月刊誌だったが休刊に追い込まれた。オフィシャルには廃刊とはなっていないが、再刊は困難だろう。わたしも2015年から年間約2本のペースで寄稿させていただいた。

 

 ライターの立場からすると、比較的に自由にモノが言える雑誌だった。世論や正論をそれほど気にする必要がない雑誌だった。そのため、この雑誌が休刊になることで、意見を発表する場を失う書き手も多いのではないだろうか。

 読者層も特別だったように思う。大人の事情での休刊は、いまさらながらしごく残念である。本稿は、わたしにとっても最後の寄稿文になってしまった。記念すべき論考は、オリジナルのタイトルが「衣食同罪」だった。

 なんでも捨てる世の中に対して鳴らした警鐘である。食品ジャーリストの出井さんの書籍に多くを負っている。

 

 

『新潮45』2018年6月号
 2018年5月18日発売、第37巻第6号(通巻434号)
「衣食をこんなに捨てていいの?:商品廃棄の経営学」
 文:小川孔輔(法政大学経営大学院教授)

 


 全食料供給量のうちの8パーセント、供給されている衣料品のうち半分が廃棄されている。なぜ、このような事態になってしまったのか。解決策はあるのだろうか。

 賞味期限切れの乾パン
 昨年の秋、日本列島は季節外れの台風にたて続けに襲われた。10月22日の日曜日も、東海道新幹線が台風のために大幅に遅れ、乗客が車内で数時間の足止めを食らった。緊急事態に対応するため、お腹を空かせた乗客にJR東海が備蓄してあった乾パンを配布した。ただし、この乾パンが「賞味期限切れ」だったことを乗客から指摘を受けた。
 事件を報じた新聞の論調は、「賞味期限切れのパンを配っていいのか」だった。『朝日新聞』に掲載された記事が、23日のYahoo!ニュースに転載され、日本人の多くがこの事件を知ることになった。インターネットの情報拡散力はすさまじい。
 JR東海はその後、乾パンを配布した乗務員の対応について公式的に謝罪することになった。しかし、パンを“消費すること”に健康上は全く問題ないのである。美味しく食べられたかどうかはわからないが、お腹を壊す乗客など出るはずがない。
 記事の存在を、友人の井出留美さんにお伝えしたところ、次のようなお返事があった。
「記事のお知らせありがとうございました。メディアの無知には困ったものです。『賞味期限』(=食品として美味しく食べられる期限)と『消費期限』(=それ以降は食品として食べてはいけない期限)は似て非なるものなのです。一般の人たちも、賞味期限と消費期限のちがいをどこまで理解しているのか。怪しいものです」
 井出留美さんは、『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書、2016年)の著者である。いただいたコメントに、わたしもまったく同感だった。その後、井出さんがYahoo!の記事の最後に、ご自身の見解をコメントとして載せている。
「JR東海は、賞味期限が切れる前に備蓄を交換しておくべきだったかもしれない。だが非常事態に際し、五感で食べられると判断し、善意で顧客に供したのであればベターな選択ではないか。賞味期限は、日持ちが5日以内の食品に表示される消費期限と違い、品質が切れる日付でなく美味しく食べられる目安である(後略)」


 それぞれの食品廃棄物
 この事件の報道で、「賞味期限切れとは何なのか」を、関係者がともに正確に理解していなかったことが露見したわけである。しかし、より深刻な問題は、賞味期限についての誤解や理解不足だけではない理由から、まだ食べられる食品が大量に廃棄されていることである。
 農水省が公表している食品廃棄に関する調査(「食品ロスの削減とリサイクルの推進〜食べものに、もったいないを、もういちど。〜」)から、「食品ロス」(フードロス)の発生量の大きさを見てみよう。食品ロスとは、まだ食べられるのに、捨てられている食品のことである。
 日本国内で一年間に廃棄される食品は、食料消費全体(8204万トン)の3割強にあたる約2775万トンである(2014年度)。このうち、2割強にあたる約621万トン(消費量の約8%)が食品ロスとして廃棄されている。
 フードロスの内訳をみてみよう。わたしたちの直感とは、すこし様相がちがっている。食品ロスの発生源は、大きく分けて二種類である。ひとつは、家庭からごみとして出てくるものである。家庭内の可食廃棄物には、食べ残し、過剰除去(ジャガイモの皮を厚く剥きすぎる!)、直接廃棄(消費期限切れや賞味期限切れ)が含まれている。これが年間約282万トン。家庭内からのものが、フードロス全体の半分弱を占めている。意外に割合が高いのである。
 残りの半分強は、事業廃棄物や有価物(リサイクルに回る大豆かす、ふすまなど)として、事業者から出てくるものである。事業所に由来するフードロス分は、家庭内からの分を差し引いて約339万トンである。事業所といっても、野菜農場から青果市場、食品メーカーの製造工場、コンビニやスーパー、ファストフード店やレストランなど多様である。食品廃棄物の出され方も、それぞれちがっている。


 コンビニの食品ロス
 農家が栽培した野菜の2〜3割は、市場に出荷できない規格外品である。畑で収穫できずに廃棄されてしまう。ところが、こうした規格外品は見た目がよくないだけで、味や栄養分は通常の規格品とほとんど変わらない。食品スーパーや飲食店で規格外品を買い取ってくれたら、畑の段階で食品ロスは激減することになる。この仕組みを導入している食品スーパーが広島県福山市にある。
 スーパー・エブリイは、契約農家から畑を丸ごと買い取っている。規格外の野菜を正規品と一緒に全量買い取ってくれるので、農家にとって生産ロスはほぼゼロ。エブリイのほうは、半値で買い取った規格外品を、「ふぞろい野菜の詰め放題」などで消費者に安く販売する。また、規格外品を外食の加工部門で加工して、「1000円ランチバイキングのサラダコーナー」にも回す。また、腕の良い小規模生産者が大量に供給できないケースでも、旬のものや良品として数量限定で店頭に並べるようにしている。生産者の立場とフードロスの削減を重視する企業姿勢の表われである。

 コンビニの業界はその対極にある。コンビニでは、賞味期限が切れる前に弁当やパンが廃棄される。筆者がヒアリングしたところでは、チェーンによって割合は異なるが、コンビニの売上で約25%を占める日配品(日持ちのしない食品)で、フードロスは5%〜8%の間だった。公正取引委員会の調査(2009年)によれば、一日の売上高の約3%(1万5000円)、年間一店舗で4.1トンの食品を廃棄していた。2014年当時、全国にコンビニは約5.5万店だったので、年間を通してコンビニが出している食品廃棄量は22万5500トンだった。これは、小売業全体の3割を占めている。

 食品小売業の中でも、とりわけコンビニでフードロスが突出して多いのは、小さな店舗で取り扱いアイテム数が少ないからである。フランチャイズ本部は、販売機会を逃すことを極端に嫌う。ところが、店頭で商品が品切れになることを恐れるあまり、発注が過剰ぎみになり逆にフードロスを生み出す原因になる。それに加えて、廃棄分のほとんどを加盟店側が負担しているが、本部の指導では、加盟店が粗利を確保するために「値引き販売」をよしとしていない。値引き販売ができないため、大量のフードロスが発生する。
 以下の文章は、井出留美さんの『賞味期限のウソ』の感想文を書いた学生が、中学生のころのコンビニ体験について述べたものである。

 「本書を読んでいて、私が最初に頭に浮かんだ食品ロスの現場がコンビニである。私は中学生のころ、『夢ワーク』という職業体験をする機会があり、3日間セブン−イレブンで働いた。そこで感じたのは、おにぎりやパンなどが大量に廃棄されていてもったいないということである。コンビニでは一日に数回食品が配達され、その度に品出しが行われる。その際、賞味期限が切れた商品は、廃棄処分となって捨てられてしまう。コンビニによっては、勤務後に従業員たちで食べるというケースもあるが、私が働いたセブン−イレブンは違っていた。ただ、捨てられていたのである。私はこの現状に対して、やるせない気持ちになったことを今でも覚えている(後略)」(山崎大くん)
 山崎君の同級生は、結婚式場でアルバイトをしている。結婚式が終わると、来場者にふるまわれたコース料理に大量の食べ残しが出る。彼は、最初の日に食品をはじめて捨てる壮絶な体験をわたしに語ってくれた。しかし、「二日目には感覚がマヒして、食べ物を捨てることに無頓着になっていく自分をみて、いやになりました」。


 フードロスを半減するために
 フードロスが生じる理由はさまざまであった。この問題を解決するためには、一般的に3つのアプローチが考えられる。
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▲奸璽疋蹈杭鏝困里燭瓩寮度的な改革。
メーカーや小売業者がビジネスとして取り組めるロス削減の工夫。

 この順番で、議論を展開していくことにしよう。まずは、食品を無駄に捨てないために、
自分たちで取り組めることが、井出さんの著書で紹介されている。井出さんの本を読んでから、わたしもゼミ生たちも次のような行動を励行するようになった。

(1)スーパーやコンビニで、棚に並んでいる商品を後ろから取らない。すぐに食べるものだから、むしろ手前に並んでいる日付の古いものを購入する。
(2)買い物をするときは、冷蔵庫の中を確認してからリストをもって出かける。
(3)数量限定、期間限定など、安いからといって余分な食品を買わない。野菜や総菜などを買う時も、一回で食べきれる少量パックや小分けのものを買うようにする。

 日本人の全員がこうしたことを実行するだけで、フードロスは半減できると言われている。ちなみに、わたしは「冬場の卵は産卵から57日はもつ」ということを知ってから、表示されている「2週間の賞味期限」がすぎても卵を捨てることはなくなった。いまでは捨てずにボイルして食べるようにしている。

 二番目のアプローチは、食品ロス削減のための制度的な改革である。これには、政府も農水省も真剣に取り組みはじめている。その成果が徐々に出始めている。たとえば、10年ほど前から農水省が中心になって「食べものに、もったいないを、もういちど。」という合言葉のもと、フードロス削減のキャンペーンを推進している。ひとつの成果が、「賞味期限の年月表示化」である。2015年4月から「食品表示法」が変わって、「製造日から賞味期限までの期間が3ヵ月を超えるものについては、『年月』で表示すること」が認められるようになった。改正以前の「年月日表示」(例:2018年5月10日)から、「年月表示」(2018年5月)に変わるだけで、賞味期限切れでゴミになる期間(20日)が延長されることになった。

 三番目のアプローチは、個々の企業が、食品ロスを削減できる革新的なビジネスモデルを創案した事例である。こうした取り組みは、単に食品の廃棄量を減らすだけではない。結果として、従業員の働き方や納入業者との取引形態にも良い方向で変化が生まれている。
 以下では、フードロスの削減に成功したベーカリーチェーンの事例を紹介する。


 アクアベーカリー
 スーパーの来店客は、10人に1人の割合でパンを購入している(買上率10%)。1人が約4個を買い上げているので、来店客100人当たりではパンが約40個売れる。店内でパンを焼いて販売するインストアベーカリーは集客の目玉になっているが、部門としてはほとんどが赤字である。ところが、「100種類の100円パン」を掲げ、1日平均3000個を売り、きちんと利益を出している会社がある。ベーカリー事業を手がけるアクアである。埼玉を中心にマミーマート、LIXILビバのホームセンター(店名「スーパービバホーム」)内に29店舗。2017年度の売上高は約30億円である。
 アクアベーカリーの買上率は平均25%(来店客100人のうち25人がパンを購入する)。通常のスーパーの2.5倍である。買上点数も6個で、100人の来店客があると150個のパンが売れる。商売繁盛の秘訣は、100円(税別)の値ごろ感、100種類から選べるバラエティー、鮮度の良い美味しいパンが支持された結果である。アクアベーカリーの特徴はキッチン(25坪)が売り場(20坪)より広いこと、売り上げは通常のインストアベーカリーの3倍(平日20万円、土日50万円)だから採算は十分にとれる。

 量販店が店内でベーカリー部門を運営する場合、パン生地は自社ないしはメーカーの工場で前加工しておく。冷凍生地を各店に配送して店内のオーブンで焼くことになるが、品ぞろえは本部が決める。しかし、標準化されたオペレーションでは、次のような「三方に悪し」の結果を生み出す。
 第1に、パン職人にとって、はなはだつまらない職場になる。品ぞろえで創意工夫をする余地がないと、優秀な職人が定着しない。第2に、コスト管理を徹底させるために、売れ筋の品種だけをたくさん焼く。ところが、朝まとめて焼いたパンは午後には鮮度が落ちて売れ残ってしまう。第3に、インストアベーカリーのパンは値段が高くつく。廃棄ロスがたくさん出る分が価格に転嫁されるからである。絞り込んだ品ぞろえでは、消費者からすぐに飽きられてしまう。

 この悪循環を断ち切るために、徳永奈美社長が考えたのが、多品種少量ロット生産方式である。しかも、パン職人にキッチン内で思う存分に腕を振るってもらうようにした。職人とパートがチームを組んで、朝6時から夕方4時までパンを焼き続ける。焼きあがったばかりのパンが、一日中フレッシュな状態で棚に補充される。そして、パンの種類は店独自に考えてよい。
 品ぞろえは「個店主義」。こちらの方が、オペレーション上は効率的である。生地からこねるから売れ行きを見ながらパンを焼くことになる。徳永社長は各店の販売実績に応じて報奨金を出す。たくさん売ってロスを減らすにはどうしたらよいか。自分たちで考えるから働くことが楽しくなる。結果として廃棄ロスがほとんど出ない。だから100円で元が取れるのである。


 衣料品も捨てられている
 フードロスは、全食料供給量の約8%だった。ところが、世の中には、もっと大量に捨てられているカテゴリーの商品がある。それは、衣料品である。なんと、ディスカウント店や再生業者への転売や海外への輸出を含めると、衣料品の供給量全体の約半分は、店舗で販売されることなく「廃棄」されている。

 衣料品の供給・消費の統計データを見てみよう。経済産業省が2016年に発表した『アパレル・サプライチェーン研究会報告書』によれば、バブルが崩壊した1990年以降の国内アパレル産業の状況はつぎのようになっている。
 「国内の衣料品市場規模は、1990年に約15兆円であったが、2010年には約10兆円にまで縮小している。他方、同時期の国内生産と輸入を合わせた国内供給量は、約20億点から約40億点へと倍増した。したがって単純に計算すれば、国内の供給単価は、20年の間に三分の一に下がったことになる」(報告書、6ページ)
 ところが、いまや3分の1の値段でジーンズやTシャツが売られているのに、作った服は半分も売れていない。コンサルタントの小島健輔氏の分析では、2015年に国内市場に供給された衣料品のうち、実際に売れたのは48.9%。残りの約半分は、焼却処分や転売、マレーシアなどアジアに再輸出されている。海外から輸入された衣料品の25%(4枚のTシャツのうち1枚)が、往復の輸送費を払ってアジアの隣国に転送されている。再輸出された中古衣料品を重さで測ると24.6万トン。偶然にも、コンビニで捨てられていた食品の廃棄量(22.55万トン)とほぼ同じ重さなのである。

 アパレル業界が激震に見舞われている要因を整理してみよう。
 大きな変化のひとつは、販売チャネルである。この20年間で消費者の衣料品購入場所は百貨店や総合スーパーから、駅ビルやファッションビルに変わった。現在では、ショッピングセンターやアウトレットモール、EC(電子商取引)サイトの存在感が増している。新しく立ち上がってくる好業績の新興ブランドは、例外なくインターネット販売を基盤にしている。

 2番目は、企画販売される商品が同質化してしまったことである。なぜなら、海外生産を担っているのは、同じような現地のOEMメーカーだからである。中国やベトナムの工場を何度か視察したことがあるが、たとえば、ユニクロの商品を製造している縫製工場は、GAPやウォルマートにも商品を供給している。また、ユニクロが撤退した中国の協力工場の生産設備を、別の有力な国内小売りチェーンが代わりに利用している光景に出くわしたこともある。

 3番目の要因は、値引き販売が恒常化していることである。海外から似たような商品が供給されるので、どの店舗も似たりよったりの品揃えになる。売れ残ってしまった不人気商品は、バーゲン・セールで処分しようとする。値引き販売した結果、どの企業も収益が悪化している。

 最後は、ビジネスモデルの課題である。この20年ほどで、アパレル産業のメインプレーヤーは、百貨店で委託販売するアパレル企業(ダーバンや三陽商会)から、消費者に直接販売するSPA型企業(ファーストリテイリングのような製造小売業)に変わった。
 ところが、製造小売業は、自社の協力工場で製造するので、製造原価率(20%〜30%)が低い。あえて正札で売らなくても、バーゲンで利益を得るビジネスモデルになっている。実際に、正札での販売比率(プロパー比率)は20%程度である。仕入れた商品の約80%は、週末のセールの期末のバーゲンで半値以下で売られている。
 また、同じSPA型企業でも、ZARAやH&M、しまむらやハニーズのような小ロット生産企業の場合は、流行を後追いする傾向がある。結局は、似たようなデザインの服が店頭に並ぶことになる。どちらにしても、フードロスとは別の形で、大量に衣料品が廃棄されている。


 新しい取り組み
 こうした悪循環から逃れるために、新しいビジネスモデルを創案する企業が現れている。アパレル業界の課題は、突き詰めて考えると、消費者に本当の値段(原価)が知らされていないことにある。そこで、「原価の内訳を公表しつつ、原価率の高い衣料品ブランドをネットで販売する企業」が現れた。こうした企業は、々睇兵舛嚢盡恐繊↓値引きを絶対にしない、場合によっては、製造コストと製造工程を開示することが特徴である。

 2010年に米国サンフランシスコで設立された「エバーレーン(Everlane)」が、その典型的なケースである。同社は、最近になってメディアでもよく取り上げられるようになった。創業からわずか4年で、売上高が3000万ドル(約40億円)を超えているものと推定されている。
 同社のHPにアクセスして商品ページをスクロールすると、原価についての詳しい説明が現れる。1枚当たりのMATERIALS(=素材)に$2.78、HARDWARE(=付属品)に$0.65、LABOR(=労働力)に$4.65、TRANSPORT(=輸送)に$0.16、費用合計が$8.24である。エバーレーンが利益の$7.76を上乗せし、$16.00で販売すると開示されている。また、同じ商品が競合他社では、$40.00で販売されていることも併記されている(2018年1月15日アクセス)。
 いまの時代に消費者に人気があって成功しているブランドは、エバーレーンに似たビジネスの特徴を持っている。 銑に加えて、ほとんどの企業が、ぞロット生産で在庫を持たない、ス告宣伝やプロモーションに費用を掛けていない。

 日本でも、エバーレーンに似たタイプの企業が現れている。日本製の上質なシャツだけに商品を絞り、価格4900円(原価率60%)で商品を売り続けている「メーカーズシャツ鎌倉」(創業1993年)。国内アパレル工場と直接提携し、オリジナルのファクトリーブランド商品だけを取り扱っている「ファクトリエ」(創業2012年)。どちらも、取り扱いのカテゴリーを絞り込んでいること、原価率50%以上の高品質な商品を国内生産していること、値引き販売をしないことに共通性がある。(岩佐一生『インテリジェント・ベネフィットを提供するアパレルブランドの創出』2018年)


廃 棄減少のための3つの提案
 結論を急ごう。「捨ててしまうのは、もったいない」と精神論で非難するのは簡単である。しかし、廃棄という現象は、買い手と売り手が合理的に行動した結果でもある。商品が廃棄されてしまうのは、ビジネス社会の仕組みに原因が求められるべきである。すなわち、「店頭で商品の露出を増やし、極力売り損ないを避ける」というマネジメントの呪縛の結果である。それは、現代マーチャンダイジングの実務的な信念に由来している。大量生産・大量販売のため、安さと品ぞろえの豊富さを過剰に演出するマーケティングの基本原理を、今こそ捨てるタイミングではなかろうか。

 小林富雄氏が『食品ロスの経済学』(農林統計出版、2015年)で「原価率が低いことが、過剰発生の原因になる」ことを理論的に分析してくれている。原価率を20%としよう。100円の商品ならば原価は20円。食品の半分を廃棄するか、衣料品の値段を半分にディスカウントしても、最終粗利は30円(粗利率では60%=30円/50円)を確保できる。だから、仕入れた商品を捨てる(値引きする)ことを前提に過剰に発注をかけるのである。商品の原価が低すぎることが大量廃棄の原因だったのである。

 食品も衣料品も原価率は20%〜30%程度。海外から安価な輸入品が入手できるようになってから、廃棄が増えたこともそれで理解できる。
 捨てても惜しくないから、コンビニでは弁当を過剰発注してしまう。海外から輸入した衣料品の原価率も20%〜30%だから、過剰に店頭在庫をもち、半値以下でディスカウントしてしまう。安売りしても売れないものは、リサイクルに回るか、海外に新古品として再輸出するか、焼却処分になってしまう。これは、地球環境からの貴重な資源の収奪である。
 それは人間の労働や資源の損失にもつながる。これだけ人手不足といいながらも、貴重な労働投入でつくった食品や衣料品をわたしたちは平気な顔で捨てている。われわれの社会は、いったいどこでまちがえしまったのか。最後に、過剰発注と商品ロス(廃棄)を減らすための、わたしからの提案はつぎの3つである。

.侫薀鵐浩府が実施しているように、フードロスに対して罰金を科す。中古衣料品についても、日本政府は衣料品の廃棄にペナルティを検討すべきときではないか。
∪い涼罎離咼献優垢髻◆峺恐僧┐高い商売」に変えていくようにしてはどうだろうか。消費者も安価な食材と衣料品を輸入できたことで海外生産の恩恵を受けた。その反面で無駄な資源を使ってしまっている。結局は、品質に問題がある低原価の商品が氾濫してしまった。このビジネスモデルを根底から変えてはどうだろうか。
コンビニの廃棄の仕組みについては、「値引き販売」を許容すべきである。近年、本部がチャージ率(本部の取り分:45%〜65%)を引き下げたり(セブン−イレブンが1%を加盟店に還元)、加盟店が全額負担していた廃棄ロスを本部が一部負担するようになった(同本部が15%を負担)。しかし、本来的には、弁当やデザート類の値引きを許せば、加盟店は利益が増えて廃棄ロスも減らせることが実験で分かっている。

 

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