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【シリーズ:農と食のイノベーション(第4回)】 「データから見る日本の農業:その脅威と未来の機会」『食品商業』(2018年11月号)

NEW!外部講演や大学院の講義で使用しているデータを、連載第4回目で整理して示すことにしました。日本の農業をデータから俯瞰してみると意外な事実がわかります。先進国中で日本の農業はそれほど特異な存在ではないということです。経済全体に占める産業規模、雇用、生産性など、食料自給率とは関係なく共通している点が多いのです。

「データから見る日本の農業:その脅威と未来の機会」
『食品商業』2018年11月号(連載:農と食のイノベーション#4)
 文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
 *この文章は、実際に発表されたものよりロングバージョンになっています。
 <リード文>
 連載の4回目では、日本の農業を基礎データから見ていくことにします。日本の農業産出額は約9.2兆円です。ただし、国内消費需要のうち、輸入農産物の供給がカロリーベースで約61%を占めています。政府は国産の果樹や牛肉の輸出を視野に入れていますが、日本の将来を見通した時には、自給率39%の国産農産物をどのように供給していくかが大きな課題になります。日本の農業部門の現状を、〇唆筏模、農業従事者、G清箸侶弍賃痢↓づ效呂陵用形態、デ聖妻の供給について、基礎データを用いて概観してみます。
 
 <農業はすそ野が広い産業>
 世界の先進国を見渡してみると、産業全体の中で農業部門が占める割合は、それほど大きなものではありません。農産物輸出大国と言われている米国でさえ、全産業の中で農業従事者が占める割合は、わずか2%程度です。一農家当たりの耕作面積が大きく(約170ha)、農薬や化学肥料の投入に加えて農作業の機械化が進んだため、農業部門の労働生産性が飛躍的に高まったからです。
 日本の場合は、1経営体当たりの耕地面積は2.87ha(2017年)で、米国の50分の一程度です。年4%でゆるやかに経営規模は拡大していますが、半分以上の食料を輸入に依存していることもあり、産業全体の中で農業部門が占める割合は、約1%しかありません。日本全体のGDP(国内総生産)が538.4兆円に対して、農業部門のGDPはわずか5.2兆円です(2016年)。ただし、農業部門に食品産業を合体させて考えると、農業・食品関連産業のGDPは53.4兆円になります。これは、日本全体のGDPの約10%に相当します。
 図表1に、農業・食料関連産業のGDPの内訳を示しています。農林漁業は6.3兆円(構成比11.8%)ですが、食品製造業が13.3兆円(24.8%)、外食が12.2兆円(22.8%)、関連流通産業が20.4兆円(38.1%)となります。「農と食」を1つの部門と考えると、産業規模も大きくすそ野が広い産業だということがわかります。
 
  <<この付近に、図表1を挿入>>
 
 <農業部門でも、高齢化対策は進んでいない>
 農業就労人口は、40年間(1976年対比)で4分の一に減少しています。2016年時点で、農業従事者は182万人です。しかも、60歳以上の農業従事者が60%を占めています。残念なことに、期待されているほどには新規就農者の数は増えていません(図表2)。
2016年の新規就者数は6.0万人ですが、それどころか前年比では人数が7.5%減少しています。つまり、高齢化による農業従事者の減少率(▲5.5%)を補うことができていないのです。しかも年齢分布をみると、新規就農者の半数が60歳以上の高齢者です。つまり、定年退職後に農業をはじめるなど、新規就農者の中には家庭菜園の延長線上で農業に従事しているひとが多数いることがわかります。
 農業従事者で増えているのは、雇用労働者と外国人です。2015年のデータになりますが、常勤の雇用労働者は20.4万人(対前年比+47.0%)で、外国人の雇用労働者2.8万人です(+14.6%)。経営規模が拡大していることと、外国人の技能研修制度改革と規制緩和の結果と考えられます。今後も、外国人と雇用労働者が日本の農業部門を支えていくことは間違いがなさそうです。
  
  <<この付近に、図表2を挿入>>
  
 <一般法人の農業参入が増えている>
 農業分野で外国人と雇用労働者が増えている背景には、経営体として一般法人が増えていることがあげられます。農業経営体は全国に125.8万ありますが、そのうちの約2%(2.5万社)が組織経営の法人です(2017年)。一般法人の農業経営組織は、対前年比で4.2%増えています。
 近年では、メーカーや外食産業だけでなく、小売業なども農業分野に参入してきています。農産物の安定供給、商品の差別化、価格と品質の安定化など、各社の参入意図は多様です。しかし、農業経営に成長の機会を見出していることは共通しているようです。組織経営の法人は経営規模も小さくないので、農業分野での雇用創出や生産性の向上に貢献できそうです。また、技術革新の担い手になる可能性もあります。
 なお、農業の生産性を高めるための経営規模の拡大とならんで、耕作放棄地をどのようにして食い止めるかが喫緊の課題です。日本の耕作面積444万haのうち、耕作に利用されているのは91.8%です。2015年段階では、28.1haが荒廃農地になっています。そのうちで再生利用可能な農地が9.8haで、この割合が年々減少しています(年率▲21.0%)。つまり、一度放棄された耕作地は復元ができない状態になっているのです。
  
 <コメが減少、野菜と肉牛が増加>
 最後に、農業生産額の内訳の変遷を見てみることにしましょう。わたしたち日本人が何を食べてきたのかが、このデータからわかります。
 図表3には、分野別の産出額が示されています。1990年と2016年を比較して、カテゴリー別の農業生産額とその構成比がグラフ化してあります。ちなみに、農業全体の産出額は、26年前の約11.5兆円が2.3兆円ほど減少しています(約9.2兆円)。金額でちょうど2割の減少です。
 生産額も構成比も大幅に減少したのが、日本人の主食である米です。1990年に、米の生産額は3兆1959億円で、農産物生産額の28%を占めていました。2016年には、コメの生産額が約半分の1兆6549億円に落ち込んでいます。この間に、一人当たりのコメの消費量が約半分(年間60KG弱)になってしまったからです。
 それとは逆に、生産額が顕著に増えているのが、畜肉(鶏肉と牛肉)です。とくに肉牛は、1990年に5981億円(構成比5%)だった産出額が、2016年には7391億円(8%)に伸びています。ブランド和牛の生産などが、国内だけでなく輸出向けに増えているからです。
 野菜はこの間、生産額がほとんど変わっていないのですが、農産物全体の中での構成比が23%から28%に伸びています。野菜の消費が堅調に推移してきたのには、3つの要因が絡んでいます。ひとつは、健康志向で野菜の消費が増えていること。2番目は、2000年ごろに一時期20%を超えた輸入がそれ以降は増えていないこと。3番目は、気候変動の影響と産地の高齢化で、供給量が不安定になり、野菜の価格が上昇気味であること。
  
  <<この付近に、図表3を挿入>>
     
 以上のトレンドは、今後も続くと予想されます。野菜の消費は世界的にも伸びています。コンビニやスーパーでも健康志向を象徴する成長アイテムです。ただし、畜肉については、資源的な配慮から、今後の生産は予断を許さない状態になっています。
| Kosuke Ogawa | 14:33 | - | - | pookmark |

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