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(その23)「私立大学の教育事情:公明正大な面接試験」『北羽新報』(2018年6月23日号掲載)
 今月号の連載コラムでは、学部小川ゼミの面接試験のシステムについて紹介しました。わたしのゼミは、経営学部で唯一ですが、指導教授が面接に加わらないゼミです。したがって、教授推薦もありません。トラスコ中山(本社:大阪)の中山哲也社長にこの話をしたら、翌年から中山さんも最終面接に加わらなくなりました。

  

「私立大学の教育事情:公明正大な面接試験」『北羽新報』2018年6月23日号
 文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)

 

 42年間、東京の私立大学で教鞭をとっています。気がついてみると、数えきれないほどたくさんの卒業生を社会に送り届けてきました。法政大学には、大学院在学中に助手として採用してもらいました。いまになってみると、制度的にはありえないことです。

 当時の私立大学は、教員採用のシステムがけっこういい加減だったからできたことだと思います。修士号を取得したばかりの25歳のドクターコースの大学院生に、助手の資格で授業・演習(「ゼミ」と呼ばれています)の担当を任せていたわけです。冷や汗ものです。
 それときから今にいたるまで、わたしのゼミ(研究室)を希望して入ってくる学生は、一学年で10人から多い時で13名ほどです。いまの競争倍率は2倍から3倍ですが、20年ほど前は、5倍から10倍の競争倍率でした。ゼミに入れる学生は希望者の3割くらいでした。
 「狭きゼミの門」は、早稲田大学や明治大学でも変わらなかったようです。当時の大手私立大学では、生徒数に対して教員の数が極端に少なかったからでした。いまは教員の採用枠を増やすことができたので、どこの大学でもずいぶんと教育サービス事情は改善されているはずです。

 

 わたしが教えているマーケティング論は、いまも当時も人気の学問分野です。教員の採用事情が変わったとはいえ、ゼミに入るのが難しい分野です。ゼミの選抜は二段階で行われます。一次の筆記試験で2倍くらいに絞ったあと、二次試験は面接になります。
 わたしは、ある時から新三年生を選抜するための面接試験に立ちあわないことに決めました。一年間ゼミで勉強して経験を積んだ新4年生に、新人の3年生の選抜を任せることにしたのです。ちなみに、毎週二コマ(3時間)の演習は、三年生と四年生で総勢26名が合同で行っています。先輩の4年生に後輩の三年生を選ばせる理由は二つです。
 まずは、自分たちだけで相談して後輩を選ぶことで、ゼミの運営に責任を持たせるためです。わたしの判断(面接への同席)が入ると、責任感が薄くなります。そこで、選抜を任せて責任感を植え付けた上でさらに後輩との絆を深めるため、「チューター制度」を導入しました。自分が選んだ3年生を、4年生が一対一で面倒を見るというものです。三年生が授業内でレポートを発表する時は、4年生のチューターが3年生の報告資料を事前にチェックします。発表がうまくいかないとチューターの責任になります。
 二番目の理由は、4年生自身が3月に就活(就職活動)を始めるにあたって、人事部が採用候補者を評価する機会を疑似体験させるためです。入ゼミ試験で自分が採用する側に回った経験があれば、今度は自分がどのように人事担当者から見られているのかを知ることができます。採用体験の学習効果は、かなりの程度有効なようです。
 

 ちなみに、わたしの知り合いで、お子さんが法政大学経営学部に入学できたとします。たとえば、秋田の知り合いから小川ゼミへの参加希望を出されても、わたしは面接官ではありません。頼まれても、ご子息を試験で優遇することができないのです。この原則を守ってきた効果は大きいと思います。わたしのような先生の立場であっても、コネを使うことができないようにしてあるのです。

 ある種の客観的な基準で人物を判断する。しかも、4年生の全員が一票ずつの投票権を行使する。そうした公平な組織運営は、自ら襟を正して責任をもって平等に判断する文化を生み出すことにつながっているようです。
 実際に、わたしが、「知りあいからの紹介でゼミを受験するひとがいるんだけど」と何気なく推薦した学生で、実際に入ゼミできたケースは、これまで5事例中でたったの一件です。だから、実に公明正大に判断を下す学生たちだとほめています。

| Kosuke Ogawa | 08:19 | - | - | pookmark |

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