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【書評】更科功(2018)『絶滅の人類史:なぜ「私たち」が生き延びたのか』NHK新書(★★★★★)
 本書の編集担当者である山北健司氏(NHK出版編集部)から、二カ月前に贈呈いただいた本である。専門分野とは遠い分野だが、とても面白かった。地球上に700万年前に現れた人類の祖先が、2001年宇宙の旅のごとく、進化を遂げていく物語が平易な文章で書かれている。

 

 ネタバレをしてしまうので、本来は著者に遠慮すべきだろうが、副題の結論を書いてしまう。

 サブタイトルは、なぜホモサピエンスが「最後の1種」として生き延びることができたのか? 著者の洞察は、「おわりに」の端的な文章で知ることができる。一部分は、「はじめに」でも紹介されている。

 

 「私たち」(人類)が生きのびることができた偶然には、3つの資質が関係している。

 一つ目は、私たち人類が、逆説的に「弱い存在」だったからである。舞台は700万年前から300万年前にかけてのアフリカ。安息の森から屈強な類人猿に追い出された私たちの祖先は、乾燥地帯の平原に出ていく。そこで、直立二足歩行を始め、マラソンランナーのように速く走れる足を獲得する。この資質は、外敵から素早く逃げることに貢献する。また、まっすぐに立ち上がることができたことで、食べ物を運搬するためのフリーな手の機能を得ることになる。

 二番目は、共同で狩りをしたり、社会として子育てをする「協力体制」を作ることができたことである。社会性は、言語とコミュニケーションの効率を高めた。このことは、外敵から群れを守り、種としての生存確率を高めただろう。ここで、推論として感動したの は、「一夫一婦制」が人類の成功に貢献している点である(おもしろいので!詳しくは本書を購読のこと)。

 三番目は、やや驚きの推論だった。つまり、ホモサピエンスが、他の人類よりも「多産」だったことである。しかも、女性が閉経後も長く生き延びることで、自分の孫を子供が育てることに時間を費やすことができた。著者は、これを「おばあさん仮説」と呼んでいる。たくさん産んで大切に育てる社会の仕組みを、人類が作ることができた結果である。

 これらは、一番近しいネアンデルタール人とホモサピエンスを分かつ重要で決定的な特質の違いである。

 

 最後の「おばさん仮説」は、現代社会にとって重要な示唆にならないだろうか?

 ここまで人類が生き延びることができた要因は、人口を増やすことができたからである。しかも、本書にはかかれていないが、丁寧に集団で子育することが、コミュニケーション能力を発達させことに貢献したに違いない。いまの社会に典型的にみられる「核家族での子育」は、その点からみても人類の生存理由と逆行している。

 また、著者がおそらくは意識していない大切なメッセージが、本書に書かれている。それは、いまの日本に対する警鐘である。人類の繁栄にとって欠かせなかった要因は、「メスの多産性」である。それを助長するために、人口減少にくさびをうつべきだという暗黙の主張が発されているとわたしは本書を読んだ。

 などなど。そのほかにも、わたしたち人類がたどってきた航路を振りかえってみることで、目から鱗の事実に出会うことができる。わたしたちホモサピエンスは、人類最後の種である。それを考えると、消えてしまった人類たちの「ありえたかもしれない未来」のことをも思ってしまう。 

 以下、興味を持った読者のために、「もくじ」を提供する。

 

 

<もくじ>

はじめに
序章 私たちは本当に特別な存在なのか
第1部 人類進化の謎に迫る
第1章 欠点だらけの進化
第2章 初期人類たちは何を語るか
第3章 人類は平和な生物
第4章 森林から追い出されてどう生き延びたか
第5章 こうして人類は誕生した
第2部 絶滅していった人類たち
第6章 食べられても産めばいい
第7章 人類に起きた奇跡とは
第8章 ホモ属は仕方なく世界に広がった
第9章 なぜ脳は大きくなり続けたのか
第3部 ホモ・サピエンスはどこに行くのか
第10章 ネアンデルタール人の繁栄
第11章 ホモ・サピエンスの出現
第12章 認知能力に差はあったのか
第13章 ネアンデルタール人との別れ
第14章 最近まで生きていた人類
終章 人類最後の1種
おわりに

 

 

 

 

| Kosuke Ogawa | 13:22 | - | - | pookmark |

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