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(その15)「世界的なダリアの育種家」『北羽新報』(2017年10月28日号)

NEW!地元紙『北羽新報』の連載、今月号では、友人のダイアの育種家、鷲沢幸司さんのことを取り上げてみました。鷲沢さんのことは、秋田県の文化功労者に選ばれたとき、ブログで紹介したことがあります。真っ黒に日焼けして、真っ赤にアルコール焼けした人物です。

 

 「世界的なダリアの育種家」 『北羽新報』2017年10月28日号

 文・小川孔輔(法政大学教授、秋田県能代市出身)

 

 秋田県出身で世界的に名前が知られている人物としては、国連事務総長を長く務められた明石康さんの名前が上がってきます。国内では、安倍政権を陰で支えている菅義偉官房長官が、秋田県人として知名度はナンバーワンでしょう。それに負けず劣らず、国際的に活躍している秋田出身の有名人がいます。秋田国際ダリア園の園長で、わが友人の鷲沢幸司さん(70歳)です。

 

 鷲沢さんを一挙に有名にしたのは、2004年にフランスで開かれた花の品評会「フランスナショナルダリアショー」でした。鷲沢さんが出品したダリアの新品種「虹」は、外国部門で最高位のファーストグランプリ(金賞)を受賞しました。花業界で、鷲沢さんの受賞は驚きをもって迎えらえました。なぜなら、鷲沢さんは、海技専門学院を卒業した元船乗りだったからです。

 そもそも鷲沢さんは花農家の後継者だったわけでもありません。ダイアの育種は、外国航路のエンジニアをやめて秋田に戻ってから、ご自身の趣味が高じてはじめたものでした。花の育種家で有名な人は、通常は有名な種苗会社の「サカタのタネ」や「タキイ種苗」、「京成バラ園」の社員だったりします。

 そのようなわけで、国内でもようやく名前が知られるようなった鷲沢さんが、いきなり海外の有名な品評会でグランプリを獲得したことは、日本の種苗業界を震撼させる事件だったのです。海外の品評会で最高位を得た後、ふつうは日本農業賞とか天皇賞とかをもらうチャンスを待つわけです。ところが、鷲沢さんの活躍はそちらの方向に向かうことはなかったのです。その後は、花業界への実質的な貢献に踏み出すことになります。

 

 わたしが鷲沢さんと知り合ったのは、2004年にグランプリを受賞した直後でした。その年、わたしのたちのJFMA(日本フローラルマーケティング協会)が、東京ビッグサイトで「東京国際フラワーEXPO」を始めたからでした。その翌年だったかもしれません、会場にひょっこり現れた鷲沢さんを花の市場の担当者から紹介されました。

 その後の10年間で、鷲沢さんは数々の賞(ジャパンフラワーセレクション、日本フラワービジネス大賞)を総なめにしていきます。しかし、勲章や名誉だけではなく、商業的に成功をおさめ始めます。真っ黒な大輪ダリアの「黒蝶」が、一世を風靡します。中輪でピンク色の「ミッチャン」は、ほとんどの花屋さんが定番品として、いまでも人気があります。

 わたしに鷲沢さんを紹介してくれた東京の花市場・大田花きの宍戸純くんに言わせると、「鷲沢さんのミッチャンだけあれば、花屋さんはほかのダリヤはいらないんじゃない?」。それくらいに売れている商品です。推測ですが、日本のダリアの約70%は、鷲沢さんが育種した品種だと言われています。

 

 鷲沢さんのすばらしいところは、そうした成功におごることなく、自分の品種と技術を囲い込まないことです。おひざ元の秋田国際ダリア園は、後継者となった息子さんに任せて、ご自分は全国各地を飛び回っています。山形のおきたま農協(鈴木清左衛門さんのダリア生産者グループ)、宮崎のダリア生産者(伊豆元久義さんのグループ)など、全国のダリア生産者に助言をして歩いています。

 わたしの心配はただ一つ、鷲沢さんの健康状態です。お酒が好きなので、やや飲みすぎる傾向があります。糖尿病、高血圧など、鷲沢さんに倒れられてしまうと、日本の花業界が困ることになります。いつまでも元気でいてください。

| Kosuke Ogawa | 11:10 | - | - | pookmark |

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