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定年退職という現実、その昔を回顧する
 人事部給与課から定年退職用の一件書類が届いた。3月31日をもって、わたしは法政大学を定年退職する。特任教授(制度的には「任期付き教授」)としてこの先も3年間は教授職に留まるので、昨日まではその実感がまったくわかなかった。しかし、定年は静かにやってくるものだ。

 

 1976年に法政大学の経営学部に研究助手として採用された。講師、助教授と、とんとん拍子で教授まで階段を駆け上がった。途中で、カリフォルニア大学バークレイ校に留学。帰国後の1986年、当時としては東京六大学で最も若い教授が誕生した。自分のことだ。弱冠34歳で教授に就任。

 法政大学から「随分と優遇してもらった」と感謝の気持ちを忘れたことはない。わずか5年のご奉公の後で、20代で二年間の留学のチャンスをいただいた。周りの先輩先生たちには、ほんとうに可愛がってもらった。そのあとは、他大学からの誘いをすべて断って、これから先は恩返しに徹しようと思ったものだ。

 1994年に大学院専攻主任として、夜間の社会人経営大学院を創設したのが39歳のとき。その後、橋本寿郎氏(当時55歳)の急逝により、急きょ経営学部長を任された。法政大学のふたりの総長(清成忠男教授、平林千牧教授)に、安倍総理の菅官房長官のように寄り添い、15年間の長きにわたって学内改革に汗を流した。

 

 その勢いで、2004年に日本ではじめての一年制の専門職大学院(法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科)を創業した。10年間赤字続きの事業(定員未達)を、平林総長たち当時の大学執行部が懸命に守ってくれた。略称「イノマネ」は、いまや60人の入学定員を大幅にオーバーしている。500人を超すMBAホルダーと、200人を超える中小企業診断士を世の中に送り出してきた。  

 話は戻ることになるが、その10年前には、理工学部機械工学科に航空操縦専修を設置。国内でのパイロット不足を予想して、航空操縦士養成に法政大学が乗り出すアイデアを提供した。その後、紆余曲折があったが、いま本学からは毎年30人のパイロットが巣立っている。

 同じ時期に、小金井キャンパスでは生命科学部が誕生した。生命科学部植物医科学専修(現、植物科学科)の設置にも関わった。東京大学農学部の難波先生をアドバイザーに、「植物病院」のアイデアをお借りしての設置だった。生命科学部の大学院は、現在とても人気になっていると聞いている。植物の時代だからだろう。

 学内で最後の仕事になったのが、昨年度(2016年度)7月、農水省生産局内に事務局を設けた「NOAF」(オーガニック・エコ農と食のネットワーク)と法政大学との連携プロジェクトだった。このプロジェクトは、いずれ大学が目指す「持続可能性(サステナビリティ)」というブランドコンセプトを具体的に実現するための発射台になるはずである。

 そういえば、文部科学省の科学研究費では、15年間連続で「基盤研究(B)」で研究助成を受けてきた。最後のテーマが、オーガニック農業と在来種の研究になりそうだ。わたしは農家の孫である。因果は巡って研究が終わるのだろう。

 

 それにしても、いま二つの書類が目の前にある。退職金の「銀行振込依頼書」と「年金受給申請書」。このまま人生が終わってしまうようで、不思議な感覚だ。この先も、経営大学院のある新一口坂校舎には、小川研究室が残されている。3階のゼミ室と大学院での「マーケティング論」の講義はまだ続く。来年度は、4月から京都女子大学で演習的な授業も担当する。

 それでも、法政大学の専任教授としては、これで終わりになる。経営大学院では、他の部門(学部)より5年早く教授たちが退職することを決めた。その張本人が自分である。そう思うと、いまの65歳で定年を迎えるのは、潔のよい退職の仕方だと思う

 自分の退職を決めた夏明けの教授会が終了後、今年定年を迎える安藤敏也教授(70歳)が、わたしに声をかけてくださった。「小川さん、(65歳定年の)ルールはやっぱり守るんだね」。自分を例外にすることはしたくはない。単に筋を通しただけのことだ。

 ローカルなルールではあるが、経営大学院で「65歳定年制」を大学執行部に認めてもらえたことで、松本教授や豊田教授など若手の教員が採用できた。おかげで、経営大学院が事業として持続可能になった。事業継承を研究しているリサーチャーとしても、首尾一貫した決断だと考えている。有言実行。その理念をそのままの形で実現した。

| Kosuke Ogawa | 14:54 | - | - | pookmark |

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